ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)の基調講演で、Silicon LabsのCTO、Daniel Cooley氏が登壇。IoTが世界に与えるインパクトや今後の展望などについて語った。
ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)の基調講演で、Silicon Laboratories(以下、Silicon Labs)のCTO(最高技術責任者)、Daniel Cooley氏が登壇し、「Charting the Connected Future」と題した講演を行った。Cooley氏は、「オンライン化によって、組み込みシステムは地球上で最大のコンピューティングプラットフォームとなる」と述べ、IoT(モノのインターネット)が世界に与えるインパクトや今後の展望などについて語った。
Cooley氏は、講演の中でまず、2011年の2つの出来事を振り返った。一つは、2020年に500億台のコネクテッドデバイスが稼働する、というEricssonによる予測の発表で、Cooley氏は、「スマートフォンの普及が始まったばかりで、それほど大規模なワイヤレステクノロジーがない時代に、500億台のワイヤレスデバイスが存在する世界を想像することは”クレイジー”なことだった」と説明。もう一つは、初めてBluetooth LEに対応した「iPhone 4S」の登場で、同氏は、「Appleは、スマホを単なる電話やポケットコンピュータではなく、現実世界と接続し、組み込みシステム間でデータをやりとりするハブとして、これまでにない規模のビジョンを打ち出した」と振り返った。
その上で、現在の状況として、2025年には557億台のコネクテッドデバイスが稼働するというIDCの予測を紹介。「Ericssonの予測はなかなか的確だったといえる。500億台という数字は、2、3年のうちに達成されるだろう」と、その旺盛な市場拡大スピードに言及した。また、iPhone 4S登場当時にあった、「猫のセンシングデータをストリーミングできる」という予測が実現したことも付け加えた。
同氏は、データセンター、PC、モバイル、組み込み機器の4つの市場を挙げ、「組み込みはオンライン化によって、地球上で最大のコンピューテイングプラットフォームになるといえる」と述べた。4つの市場を比較すると、組み込み機器は出荷数、主要顧客数ともに最大となる。
Cooley氏は、「われわれは、電力やストレージ、帯域幅、コストや製品寿命などに制約がある中で、より多くの顧客/セグメントにより多くの数量を出荷している。そして最も重要なことは、それらがオンラインになろうとしていることだ」と強調。「私が組み込みに最も期待を寄せているのが、オンライン化だ。どんなCPUを搭載していてもクラウドに接続できるというアイデアだ。これは非常に強力なコンセプトであり、今後10年、20年と続いていくだろう。私も含め多くの人々が、IoT技術を何世代も設計していくことに残りのキャリアを費やしていくことになるだろう」と語った。
また、IoTの展開について、演算処理やセンシング、信号伝送などの機能を備えた組み込みシステムにクラウド接続を追加するという多くの電子機器でみられるパターンの他に、電子棚札などそもそも電子機器が存在しなかった領域にも可能性があるとし、「多くのエンドマーケットで、以前は何もなかった所に、何十億という潜在的な”ソケット”が存在することが分かってきた。いったん接続されれば、これらのデバイスは全く異なるパラダイムを持つようになり、開発や製造に関する考え方も全く異なるものになる」と強調した。
Cooley氏は、このIoT市場の成長に合わせてSilicon Labsが、初期のシリコンから「完全なプラットフォーム」へ到達するまでの道のりについて、「われわれがこの事業を始めたのは約20年前だ。8ビットのMCUをサブギガヘルツの低データレート無線トランシーバーに接続した地味なものだったが、テクノロジーの世代が進むにつれ、より多くの処理能力、接続性、セキュリティ、AI(人工知能)などを実現してきた」(同氏)と語った。
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