Linux Foundationの欧州部門Linux Foundation Europeが2023年5月、「RISC-V Software Ecosystem(RISE)」プロジェクトの創設を発表した。Armの牙城を崩すべく、RISC-Vアーキテクチャ向けのオープンソースソフトウェア開発を加速させていく計画だ。
RISC-Vは、Armの地位を脅かす存在になっている。Linux Foundationの欧州部門であるLinux Foundation Europeは2023年5月31日(ベルギー時間)、「RISC-V Software Ecosystem(RISE)」プロジェクトの創設を発表した。Armの牙城を崩すべく、RISC-Vアーキテクチャ向けのオープンソースソフトウェア開発を加速させていく計画だ。
RISC-V命令セットアーキテクチャ(ISA)は、2010年にUC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)の学術プロジェクトとして開始されたマイクロプロセッサの開発プロジェクトである。それ以来、オープンソースのRISC-V ISAは、勢いを増してきた。
1990年代を振り返ると、Armプロセッサはほぼ全ての携帯電話の心臓部に組み込まれ、大きな勢いがあった。さらに2000年代には、組み込み分野でよく見られていた独自のマイクロコントローラー(MCU)アーキテクチャのほとんどを一掃した。
現在、Armは、これらの分野や、同社が参入している他のあらゆる分野でリーダーシップを失う危機にあり、その懸念はますます高まっている。Armは現時点では、何十年にもわたる懸命な取り組みによって獲得した多くのライセンシーを保持しているが、RISEプロジェクトがRISC-Vオープンソースソフトウェアの開発に秩序と統制をもたらすことで、RISC-Vがシェアを急拡大する可能性もある。
コンソーシアムの運営委員会の初期名簿を見れば、RISEと勢いのあるRISC-Vエコシステムを業界が支援していることが分かる。この名簿には、Andes TechnologyとGoogle、Intel、Imagination Technologies、MediaTek、NVIDIA、Qualcomm Technologies、Red Hat、Rivos、Samsung Electronics、SiFive、T-Head、Ventanaが名を連ねている。
彼らの狙いは、RISC-V ISAを唯一の主要な非x86プロセッサアーキテクチャに昇格させること、もしくは“Armの支配”を終焉させることだ。
この2つは、本質的に同じ結果をもたらす。RISC-Vは、中国でも勢いを増している。オープンなISAは、政治的制約や禁輸措置の対象とならないからだ。
RISEプロジェクトの創設は、同プロジェクトの議長を務めるAmber Huffman氏が明確に述べているように、「RISC-V ISAに不可欠なエコシステムが、本来あるべき速度や効率で発展していないというRISC-Vコミュニティー内の認識」を表している。同氏は、同プロジェクトについて、「RISEプロジェクトはRISC-V Internationalと協力して、RISC-Vソフトウェアエコシステムの準備を加速すべきという共通の緊迫感を持つリーダーを集めた」とコメントしている。
世界中のRISC-Vの活動に欠けていたのは、何よりもこの緊迫感だった。
RISC-Vのハードウェア開発に関しては、状況が異なる。2015年1月に36人のメンバーで発足したRISC-V Foundationは、広がりつつあるRISC-Vの活動を支援し、基本的な命令セットと命令拡張を見極めて体系化した。その2年後に設立されたRISC-V Internationalは、RISC-V Foundationの活動を引き継ぎ、それ以来ISAは着実に成長してきた。RISC-V Internationalは現在、70カ国以上に約3200人のメンバーを擁している。
UC BerkeleyのParallel Computing Labのディレクターを務めていたDavid Patterson氏は2018年、IEEE-CNSV(IEEE Consultants' Network of Silicon Valley)の年次ディナーミーティングに登壇し、「RISC-Vにおける私のシンプルな目標、それは『世界征服』だ」という言葉でプレゼンテーションを締めくくった。
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