キーサイト・テクノロジーは同社のユーザー向けイベント「Keysight World 2023」で、SiC/GaNパワーモジュールの評価に対応した最新パワーデバイスアナライザー「PD1550A」の実機を国内で初めて展示した。
キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)は2023年8月28〜31日、同社のユーザー向けイベント「Keysight World 2023」を開催し、2022年5月に発表したパワーデバイスアナライザー「PD1550A」の実機を国内で初めて展示した。パワーモジュールの動特性を評価するもので、特に高速なスイッチング特性を持つSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ(WBG)半導体を採用したパワーモジュール向けに設計されている。なお、現段階ではSi(シリコン)とSiCに対応しており、今後GaNにも対応予定だという。
同製品では、最大1360Vおよび2000Aのパワーモジュールの測定が可能だ。2022年5月の発表時には最大1000Aだったが、さらに改良を行ったという。ゲート電圧は−28〜+28Vまで対応。inTEST Thermal Solutionsの「ThermoStream」およびホットプレートという2つの熱管理手法をサポートしていて、−40℃〜+175℃の範囲で温度特性の評価もできる。
キーサイトによると従来、WBG半導体パワーモジュールの評価には、電源とオシロスコープ、ファンクションジェネレーターなどを組み合わせて自作したテスターが用いられる場合が多く、準備や測定に時間がかかるなどの課題があった。
PD1550Aは、そうした課題を解決するものだ。パワーモジュールと測定器との接続に使用するインタフェースボードは、キーサイトがパワーモジュールごとに最適なものをカスタムして提供するため、準備の手間を減らすことができる。ボードは端子を差し込むだけで容易にパワーモジュールに取り付けられる構造となっていて、はんだ付けも不要だ。ゲート抵抗も取り外し可能で、交換しながら測定を行える。さらに、不揮発性メモリを搭載していて、どのインタフェースボードを接続したか自動で検知して記録。ミスの可能性を低減し、システムの信頼性を高めている。
同製品はPCに接続して使用するが、専用ソフトウェアはディスクリート向けの前世代品「PD1500A」と同様のものだ。ソフトウェア上で電圧や電流、温度といった測定条件を入力し、ボタンを押せばすぐに測定が開始するため、「測定中、エンジニアの拘束時間はない」(キーサイト担当者)という。測定条件や結果のデータは蓄積され、「1年前に計測したデバイスを同じ条件で再度測定したい」といった場合でも、過去の測定条件を呼び出して同様の測定が行える。解析がうまくいかなかった場合には、しきい値などの条件を変更して解析し直すことが可能だ。
「測定結果の管理や解析、レポートの作成に時間がかかることがエンジニアの作業効率を下げているが、PD1550Aの機能によって効率的に解析やレポートを行うことができる」(同社担当者)
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