キーサイトによると、SiC/GaNパワーデバイスの測定でもSiパワーデバイス向けの測定器を使用しているエンジニアもいるというが、高速スイッチングのデバイスを評価するには向かないという。自作テスターの場合も正確性や再現性を担保することは難しい。
こうした課題を踏まえ、PD1550Aでは、同軸シャント抵抗を電流センサーとして採用することで、広帯域の電流測定を実現している。同軸シャント抵抗には帯域幅の個体差が大きいという問題があったが、周波数特性を一つ一つ事前に測定し補正を行うことで正確性を向上させたという。同社担当者は「高周波の測定に強みを持つキーサイトならではの技術だ」と説明する。
また、ハイサイドのゲート電圧測定においては、コモンモード除去を行うことも重要だ。キーサイトによると一般的な差動プローブを用いた場合のコモンモード除去比(CMRR)は60dB程度かそれ以下であることが多いが、ゲート電圧の正確な測定には90dB程度が必要だという。PD1550Aには新たに開発した光絶縁プローブを使用して50MHzで100dBのCMRRを確保。同様に重要視されるノイズ抑制についても、市販品よりも優れた性能を実現したという。
「コモンモード除去比とノイズ抑制性能を高めたことで、業界で最も正確に特性を測定できるソリューションとなった」(同社担当者)
パワーモジュールの高耐圧化が進む中、開発段階の極端な条件下での試験は爆発などの危険性も高いため、PD1550Aは安全性を重視した設計になっているという。CE/CSA/UL/KCCといった国際安全性規格に準拠しているほか、測定中は前面ドアがロックされ、測定後に放電が完了するまで開けられない構造になっている。緊急停止ボタンも備え、停電時には自動で放電する。
キーサイトによると、今後は前世代品であるPD1500A向けに開発した技術を応用し、GaNパワーモジュールの測定に対応する予定だという。
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