東京理科大学と埼玉大学の共同研究グループは、導電性セラミック材料の「WSi2(二ケイ化タングステン)」が横型熱電効果を示す物質であることを実証し、そのメカニズムについても解明した。
東京理科大学と埼玉大学の共同研究グループは2024年11月、導電性セラミック材料の「WSi2(二ケイ化タングステン)」が横型熱電効果を示す物質であることを実証し、そのメカニズムについても解明したと発表した。
横型熱電変換は、物質の温度差と直交する方向に電位差が発生する現象。この現象を利用した次世代センサーの開発が期待されている。これまでの縦型熱電変換で課題となっていた、「素子構造の複雑さ」や「接合部における熱損失」を、横型熱電変換にすることで解決できるとみられている。
これまで、物質のネルンスト効果を利用した横型熱電変換の研究も行われてきたが、素子に外部磁場を加える必要があった。これに対し近年は、軸依存伝導極性を有する物質を活用した横型熱電変換技術も報告されている。外部磁場なしで作動するためだが、こうした特性を持つ物質が極めて少なく、熱電性能も低いことが課題となっていた。
研究グループはこれまで、希土類化合物「LaPt2B単結晶」を作製し、横型熱電効果が得られることを実証してきた。そして今回は、WSi2を用いその特性を評価することにした。
実験では、空間群I4/mmmの正方晶構造を持つWSi2単結晶を用い、室温以下の温度域でゼーベック係数や電気抵抗率、熱伝導率を測定した。これにより、面内方向のゼーベック係数は「正」の、面外方向のゼーベック係数は「負」の軸依存伝導極性を示すことが分かった。
また、熱電性能測定と第一原理計算により、「c軸方向に円筒形の正孔フェルミ面が伸び、ab軸方向の伝導を支配」し、「c軸に直交する方向に大きな面積の電子フェルミ面が広がり、c軸方向の伝導に寄与している」ことを確認した。これらの結果から、WSi2は一次元的な電子フェルミ面と二次元的な正孔フェルミ面を併せ持ち、軸依存伝導極性を示すことを明らかにした。
WSi2の結晶軸から45度回転した方向に温度勾配をかけた時の熱電性能についても検証した。この結果、横方向のゼーベック係数は室温で6μV/Kとなり、ゼロ磁場および広い温度範囲で優れた性能を示すことを確認した。無次元性能指数は100K以上で約0.001となった。この値は従来の熱電材料よりも低いが、横型熱電材料を理解するために役立つとみている。
今回の研究成果は、東京理科大学大学院創域理工学研究科先端物理学専攻の大隅翔也大学院生(2024年度修士課程1年)、東京理科大学創域理工学部先端物理学科の岡崎竜二准教授および、埼玉大学大学院理工学研究科物質科学部門の佐藤芳樹助教(当時は東京理科大学創域理工学部先端物理学科助教)らによるものである。
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