負極にNTOを用いた新型電池のサンプル提供を開始 東芝：超急速充電、高体積エネルギー密度、長寿命を両立

東芝は2025年6月4日、ニオブチタン酸化物（NTO）を負極材に採用したリチウムイオン電池「SCiB Nb」のサンプル提供を開始したと発表した。

[竹本達哉，EE Times Japan]

ニオブチタン酸化物（NTO）を負極材に採用

　東芝は2025年6月4日、ニオブチタン酸化物（Niobium Titanium Oxide：NTO）を負極材に採用したリチウムイオン電池「SCiB Nb」のサンプル提供を開始した。同社は「NTOを負極に用いたリチウムイオン電池の販売は世界初」とし、商用電動車両などの用途を見据えた製品として実用段階に入った。

リチウムイオン電池「SCiB Nb」の外観［クリックで拡大］ 出所：東芝

　SCiB Nbは、同社のチタン酸リチウム（LTO）系SCiBが持つ「長寿命」「高安全性」の特長を維持しながら、体積エネルギー密度を大幅に向上。正極にリチウムリン酸鉄を用いたリチウムイオン電池（LFP電池）と同等のエネルギー密度を確保しつつ、10分で80％の充電が可能な超急速充電性能を実現している。

　充放電寿命についても優れており、25℃環境での3C充電（20分充電）条件で部分急速充放電を1万5000サイクル以上繰り返しても、電池容量の80％を維持。高頻度な急速充電が求められるバスやトラックといった大型商用電気自動車（EV）での利用を前提とした性能設計となっている。

LTOを用いた従来のSCiB同様の安全性

　LFP電池など炭素系リチウムイオン電池では、急速充電の繰り返しで負極で金属リチウムが析出し、内部短絡が生じる危険性がある。SCiB Nbでは、LTOと同様にNTOがそのリスクを原理的に回避できる構造であるため、急速充電を繰り返しても発煙や発火の可能性を抑えられる。

　新製品は、東芝が、ニオブを生産販売するCBMMおよび、CBMMの株主であり日本市場の総代理店を務める双日と共同で開発。2024年にはCBMMのブラジル・アラシャ鉱山で、NTOを用いた電池を搭載した電動バスによる実証実験も開始していた。

　今回提供を開始したのは、容量50Ahのラミネート型セル。同社は商用車両のほか、定置型蓄電池や船舶などへの応用を期待している。

主な仕様［クリックで拡大］ 出所：東芝

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