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「現場ですぐ使えるロボット」普及へ、ソニーが自社コア技術を外部提供設定不要で何でもつかむ触覚センサーなど(1/2 ページ)

ソニーグループは、ロボットの開発を通じて培ったコア技術の外部提供を進める。重さや形状などの情報なしでさまざまなモノを把持できる触覚センサー、摩擦や慣性の影響を打ち消してシミュレーション通りの動作を再現するアクチュエーターなどを展開している。

» 2025年08月21日 13時30分 公開
[浅井涼EE Times Japan]

 ソニーグループ(以下、ソニー)は、ロボットの開発を通じて培ったコア技術の外部提供を進めている。重さや形状などの情報なしでさまざまなモノを把持できる触覚センサー、摩擦や慣性の影響を打ち消してシミュレーション通りの動作を再現するアクチュエーターなどがその例だ。ソニーはこれらの技術を「TECHNO-FRONTIER 2025」(2025年7月23〜25日、東京ビッグサイト)でも紹介した。

ソニーのロボット技術を用いたデモ

 ソニーはもともと、人手不足の解消につながるような実用的なロボットの提供を目指して研究開発を行ってきた。しかし「いきなりロボットそのものを買ってもらうことは難しい」(開発担当者)という判断から、ロボットに用いるセンサーやアクチュエーター、ソフトウェアなどのコア技術を社外に提供する体制を整えたという。

 製造業や医療/福祉などの現場で人間の労働をロボットが代替するにあたって課題となるのは、現場の状況や必要な技術がそれぞれ異なることだ。「100組の顧客がいれば100通りのニーズがあり、1つの技術で答えを出すことは難しい。現場に合わせてロボットを導入するインテグレーションには専門の技術者も必要で、時間やコストがかかる。そのせいでロボットの導入がなかなか進まない」(開発担当者)。そこでソニーは、インテグレーションの手間を減らす「蓋を開けたらすぐに使えるロボット」を目標にしているという。

設定不要であらゆるものを「そっとつかむ」触覚センサー

 「NARI-Touch(ナリタッチ)」は、ロボットハンドが対象物を把持する際の「滑り」を事前に予測する触覚センサーだ。サイズは31.8×17.1×13.3mmと、人の指先ほどの大きさだ。

触覚センサー「NARI-Touch」 触覚センサー「NARI-Touch」[クリックで拡大]

 NARI-Touchの表面は柔らかいゴムで覆われ、内部には圧力の分布を測定するシートがある。圧力の分布情報から、表面のゴムがどのような方向に変形しているかを算出し、独自のアルゴリズムで並進方向と回転方向の滑り出しを予測する。この予測に基づいてつかむ力を自動決定し、滑らない最小限の力で対象物を把持できる。

NARI-Touchが対象物の滑りを予測する様子

 「滑りそうになったら力を強め、滑りが収まったら弱める」という仕組みで、対象物の重さや形状の情報は用いず、あくまでその場で対象物に合わせて動作する。対象物ごとのパラメータ設定が不要なので、ロボットハンドの制御がシンプルになる。

 ぶどうのように複雑な形状のものや、エクレアのように柔らかく長さがあるものも、滑らない最小限の力でそっとつかむ。また、ボトルをつかんでいる間にそこに水が注がれれば自動で力を強めていくなど、臨機応変な動作が実現する。

 事前に細かい設定が必要なセンサーは、設定の手間がかかるだけでなく設定と違う状況になったときに対応できない。一方、NARI-Touchはその都度自動的につかむ力を決定できるので、状況の変化に強いといえる。

 以下の動画は、NARI-Touchと市販の一般的なアクチュエーターを組み合わせたデモの様子だ。六角柱状の菓子のパッケージや、水が入ったボトルをつかんでいる。菓子パッケージは六角柱の辺の部分をつかんでいて、接地面積が小さくてもつかめることが分かる。

菓子のパッケージをつかむデモ
水が入ったボトルをつかむデモ

 対象物が滑りそうになったとき、つかむのではなく逆に力を弱める「離すモード」も搭載していて、受け渡し作業に利用できる。

 製品ラインアップとしては、表面のゴムに突起があるものと平らなものの2モデルを用意している。

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