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TDKがやり投げを3Dデータ化 21gのセンサーで「欲しい情報が全て載っている」(1/2 ページ)

TDKは、やり投げ競技のデータ可視化に成功したと発表した。TDKのセンサー技術を応用して投射角度や回転、速度などのデータを取得したり、やりの軌跡を3Dで表示したりするものだ。やり投げの新井涼平選手は「選手の欲しい情報が全て載っている」と期待を寄せた。

» 2025年09月11日 10時30分 公開
[浅井涼EE Times Japan]

 TDKは2025年9月10日、やり投げ競技のデータ可視化に成功したと発表した。TDKのセンサー技術を応用して投射角度や回転、速度などのデータを取得したり、やりの軌跡を3Dで表示したりするもので、競技の魅力向上やアスリートの技術向上につなげる。

 TDKが同日に開催したメディア向け発表会には、日本歴代3位の記録を保持する新井涼平選手らも登壇。新井選手は「普段の練習では映像を撮って分析しているが、やりの軌跡はほとんど映らない。3Dでさまざまな方向から見られるとなると、選手の欲しい情報が全て載っていると感じる。技術向上にとてつもない貢献になる」と期待を寄せた。

前列左から中島翔平コーチ、M中賢悟選手、大塚元稀選手、新井涼平選手。後列左からnomena 武井祥平氏、TDK 小池中人氏、InvenSense 生本修一氏 前列左から中島翔平コーチ、M中賢悟選手、大塚元稀選手、新井涼平選手。後列左からnomena 武井祥平氏、TDK 小池中人氏、InvenSense 生本修一氏[クリックで拡大]
やり投げのビジュアライズデータ やり投げのビジュアライズデータ[クリックで拡大] 出所:TDK

21グラムのセンサーデバイスをやりに取り付け

 TDKは、1983年の第1回大会から世界陸上のオフィシャルパートナーを継続している。そうした背景から、TDKの技術を生かして陸上競技の魅力を引き出すことを目標に、陸上競技の国際連盟であるWorld Athletics(世界陸連)との共創プロジェクトが開始した。2022年ごろから協議を進め、世界陸連の「投てき競技は特に可視化やデジタル化が進んでいない」という声などを受けてやり投げの可視化に向けた取り組みを始めたという。デバイスの開発は2024年ごろから行っている。

 そして出来上がったのが、競技用のやりに装着できるアタッチメントセンサーだ。TDKの気圧センサーや慣性計測ユニット(IMU)、バッテリー、記録媒体などを一体化したもので、やりの投射角度や高度、回転数、速度、加速度、飛行軌跡などのデータが得られる。

アタッチメントセンサーの外観 アタッチメントセンサーの外観[クリックで拡大] 出所:TDK

 IMUは、TDKグループのInvenSenseの製品「ICM-45686」を採用した。3軸のジャイロセンサーと3軸の加速度センサーを組み合わせていて、精度は同社のIMUの中でも最高レベル。低消費電力かつ2.5×3×0.81mmと小型なので、小型/軽量化が重要な今回のアプリケーションに適しているという。

 アタッチメントセンサーの重さは基板とバッテリーが13.2グラム、やりに装着するためのケースが7.87グラムで合わせて約21グラムだ。デバイスの開発を担うnomena 代表の武井祥平氏は「まだプロトタイプの段階だが、選手からのフィードバックも受けながら開発を進め、初期のものと比べるとかなり小型/軽量にできた」と説明する。投てき時の重心などへの影響は「まだ改善点が多い」とし、「今後は基板やバッテリーの小型化を進め、将来的にはやりに内蔵する構想もある」と述べた。

 TDK 広報グループ テクノロジー&ブランドパートナーシップ 小池中人氏は「やり投げの可視化で、『ビューイング(鑑賞)』と『コーチング(指導)』のトランスフォーメーションに挑戦したい。ビューイングについては、やりの動きを可視化することで、単に見た目の面白さを高めるだけでなく、選手の努力の跡や技術の高さも伝わりやすくなり、より多くのファンを引きつけると考えている。コーチングについては、やりの射出角度や初速度といった指標を可視化することで役立ててほしい」と語った。

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