ソニーが初の車室内用イメージセンサー投入、法規制で急成長の市場狙う：「業界最小画素」RGB-IRセンサー開発（1/2 ページ）

ソニーセミコンダクターソリューションズが2.1μm画素を採用し、RGB画像とIR画像の撮像をワンチップで実現するインキャビン用のイメージセンサーを開発した。車外向けのセンサーを中心に扱ってきた同社にとって、この用途では初の製品だ。背景にあるのは、法規制強化によって今後急速に拡大が見込まれる市場機会だ。同社担当者に、製品の詳細や狙いを聞いた。

[永山準，EE Times Japan]

　スマートフォン向けに続く新たな収益の柱とすべく車載向けイメージセンサーを強化するソニーセミコンダクターソリューションズ（以下、SSS）。これまでは車外向けのセンサーを中心に扱ってきたが、今回、新たにインキャビン向けのイメージセンサーを開発した。背景にあるのは、法規制強化によって、今後急速に拡大が見込まれる市場機会だ。同社担当者に、製品の詳細や狙いについて聞いた。

さまざまな「業界最高」性能で攻める

　スマホ向けを主力にイメージセンサー市場全体で首位の座を維持するソニーだが、車載向けの商品化発表は2014年と後発だった。それでも高品質なハイエンド向けを中心に展開を進め、車載用イメージセンサー金額シェア（インキャビン除く、200万画素以上の車載イメージセンサーで）は2021年度の9％から2022年度には25％に大きく拡大し、2024年度には37％にまで成長。「車載向けイメージセンサーで2026年度に金額シェアで43％」という目標に向け順調にシェアを伸ばしているという。

　ただ、同社がこれまで車載分野で注力してきたのは運転支援や駐車支援などのための車外向けのイメージセンサーであり、上記の金額シェアおよび目標などは全て「インキャビン向けは除く」としている。

　そうした中で今回、SSSは「業界最小」（同社）の2.1μm画素を採用し、RGB画像とIR画像の撮像をワンチップで実現する、有効約500万画素のCMOSイメージセンサー（以下、RGB-IRイメージセンサー）「IMX775」を、車室内モニタリングカメラ向けに商品化すると発表した。SSSとして、この用途では初の製品だ。IMX775は近赤外感度やRGBダイナミックレンジも「業界最高クラス」（同社）と高い性能を実現しているという。

IMX775［クリックで拡大］ 出所：ソニーセミコンダクターソリューションズ

着実に伸びる市場、「やらないという選択肢はない」

　IMX775開発の背景にあるのが、事故防止や安全運転の支援を目的としたドライバー状態把握の義務化、乗員の安全性を確保するための体格や姿勢、シートベルト装着状態の確認などに関する法規制強化の動きだ。

　例えばEUでは2024年から、全てのフルモデルチェンジする新車で眠気や注意散漫の検知をする「ドライバー監視システム（DMS）」を搭載することが義務化された。さらに2026年には全ての新規登録車に規則が適用される予定だ。加えて、自動車の安全性能を評価するNCAP（New Car Assessment Program）においても、ドライバーおよび同乗者の状態をカメラで検知する機能に関する評価項目の拡充が進められている。

　インキャビン用カメラは、一般的に車両1台当たり1〜2基程度の搭載が主流となり、金額の規模としては車外用センサーのように大きく膨らむことはないとみられる。それでもこの法規制強化を背景に、その需要は着実に高まりつつある。SSSによるとインキャビン用のカメラは今後年率15％以上（SSS調べ）と急速な市場拡大が見込まれているといい、同社は独自技術を生かした高性能品を展開し、この市場でのシェア拡大を狙う。

　SSSの車載事業部車載セールス＆マーケティング部で担当部長を務める原田恵充氏は「安心安全な車の実現に向けイメージセンサーを提供を進めるソニーとして、インキャビン用をやらないという選択肢はない。今後、さらにポートフォリオを広げていく中で、インキャビンも重要なカテゴリーだと捉えて開発している」と説明していた。