IMX775の大きな特長は、「業界最小」(同社)の2.1μmという画素サイズを採用しつつも「業界最高クラス」(同)の感度を両立した点だ。微細な画素によって有効約500万画素の解像度で、ドライバーと乗員を含む車室内を広角に撮像することが可能になる。
IMX775では可視光(RGB)と940nmの近赤外光域(NIR)での撮像をワンチップで行えるが、RGBダイナミックレンジは「業界最高」(同)の110dBを実現。NIRでの撮像も「業界最高クラス」の感度で実現し、低照度環境下でもドライバーの視線や乗員の状態を、高精度に認識できるという。
微細画素における量子効率の向上は、具体的には画素内に凹凸構造を設け、さらにフォトダイオードの容量を増やすよう画素構造を最適化することで実現した。
凹凸によって入射光を回折させて吸収率を高めると同時に、シリコンも通常より厚くして感度を稼いだ。また画素間を隔離するFTI(Full Trench Isolation)によって隣接する画素との混色も防いでいる。SSSはこうした構造によって、2.1μmの画素サイズにおいても、940nmの波長に対して35%という高い量子効率を実現したとしている。
IMX775では、RGBおよびNIRで高画質な撮像をワンチップで実現するため、ハイブリッド露光方式を採用した。
具体的には、RGB撮像では、ローリングシャッター方式を採用し、オンチップでの複数枚の画像合成処理も行うことで、ワイドダイナミックレンジ110dBを達成した。これによって車室内の明暗差の大きなシーンでも、高画質なRGB画像を生成できるとしている。一方でNIR撮像ではグローバルシャッター方式を採用。上述の高いNIR感度と合わせ、ドライバーの視線や瞬きなどの動きを高精度に認識することを可能とした。
また一般的にRGB/NIRセンサーはRGB画素にNIRの成分が混入するため、不自然な色再現が課題になる。SSSでは今回、独自のNIR成分除去アルゴリズムを搭載した信号処理回路を開発し、NIR光照射下でも優れた色再現性を実現したとしている。
このほか、NIR画像の解像度を向上させるアップスケーリング機能(IRの画素は1.25Mピクセルだが信号処理で5Mピクセルにする)や、フレームごとに任意の画素領域を切り出して出力するコンテキストスイッチング機能などの信号処理も内蔵。「外部のISPを使用せずにシステム全体の小型化を実現できる」としている。
原田氏は「RGB撮像では、誰もがスマホを持つ時代で、車の画面も見た時に違和感のない画質を担保できるよう開発した。また、後段の処理との親和性も考慮し、ローリングシャッターかつ、通常のRGBセンサーと同じ出力形式を取った。一方のIRは機械による認識において必要十分な画質だが、グローバルシャッター方式や、感度、解像度などの認識アルゴリズム側が求める部分は押さえた上で最適な形で開発した」と説明していた。
IMX775は既に自動車メーカーの採用も決まっていて、2026年春に量産開始を予定。自動車向けの信頼性試験基準「AEC-Q100」の「Grade 2」を量産までに取得予定という。また、自動車向け機能安全規格「ISO 26262」に準拠した開発プロセスを導入し、自動車用安全水準「ASIL-B」にも対応している。このほかオプションで、CMOSイメージセンサーの真正性を確認する公開鍵アルゴリズムを用いたカメラ認証、取得した画像の改ざんを検知するための画像認証、制御通信の改ざんを検知するための通信認証にも対応可能だという。
型名 | IMX775 | |
---|---|---|
有効画素数 | 2593 × 945 約504万画素 | |
イメージサイズ | 対角6.81mm(1/2.64型) | |
ユニットセルサイズ | 2.1 × 2.1μm | |
フレームレート(最大、全画素読み出し) | 60fps | |
量子効率(940nm) | ≧35% | |
ダイナミックレンジ(RGB) | 110dB | |
電源電圧 | アナログ | 3.3V |
デジタル | 1.1V | |
インタフェース | 1.8V | |
インタフェース | MIPI CSI-2 シリアル出力(4lane/2lane) | |
パッケージ | ベアチップまたは120pin BGA | |
パッケージサイズ | 9.35 × 8.05mm | |
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