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HDDはデータセンターで根強い需要、大容量化の手を緩めぬWD2027年には40TB品を投入

Western Digital(WD)は都内で記者説明会を開催。データセンターではHDDが中心的な役割を果たしていると強調し、熱アシスト磁気記録(HAMR)などを適用して、さらなる大容量化を目指す。2027年には、HAMRベースの40TB(テラバイト)品を投入する計画だ。

» 2025年10月03日 15時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 Western Digitalは2025年10月1日、都内で記者説明会を開催した。同社は2025年2月に、NANDフラッシュメモリ事業をSandiskとしてスピンオフ上場。それ以降、国内では初の記者説明会となる。

 Western Digitalは近年、データセンター事業を強化してきた。2025会計年度第4四半期(2025年4月〜6月期)では、ハイパースケーラー/クラウドビジネスは、Western Digital売上高全体の90%を占めるほどに成長している。

 Western Digital CEOのアーヴィン・タン氏は「データは新しい原油」だと強調する。「データは人、マシン、さらにはAIそのものによって生成されるようになっている。データがもたらす価値も、AIによって急速に増えている」(同氏)

Western Digital CEOのアーヴィン・タン氏(左)とジャパンカントリーオフィサーの高野公史氏 Western Digital CEOのアーヴィン・タン氏(左)とジャパンカントリーオフィサーの高野公史氏

データの8割がHDDに保存されている

 そうした中、データセンターにおいてHDDはまだまだ中心的な役割を担っているとタン氏は強調する。同氏によれば、データセンターではデータの約8割がHDDに保存されているという。「HDDは堅ろう性と信頼性が高く、何よりTCO(Total Cost of Ownership)が優れているからだ」(同氏)

AIデータセンターにHDDが使われる理由[クリックで拡大] AIデータセンターにHDDが使われる理由[クリックで拡大]

 データの8割がHDDに保存されるという状況は、今後も当面続く見込みだ。「市場調査会社のIDCがそう予測していて、われわれとしてもその予測は妥当だと考えている」(タン氏)

 ハイパースケーラーは、データを読み出す頻度に合わせて、ストレージを3階層に分けて使っているとタン氏は続ける。NANDフラッシュメモリ(SSD)、HDD、そして磁気テープだ。その割合はNANDフラッシュが10%、HDDが80%、磁気テープが10%ほどだという。「ハイパースケーラーは、これら3階層のストレージにあるデータを、TCOが優位になるように動的に動かしている」(タン氏)。AIの登場によりデータの価値が上がっていることから、データをどこにどう保存するかはハイパースケーラーの利益にも直結する。保存されるデータの絶対量が増加している今の状況は、HDDやNANDフラッシュはもちろん、磁気テープにとってさえ、よいビジネス機会になっているとタン氏はみている。

大容量化に突き進むHDD

 AIというメガトレンドを背景に、Western Digitalは大容量HDDの開発を加速させてきた。同社のHDDは、3年前は最大容量が18TB(テラバイト)だったが、現在は32TBである。これは驚くべき進歩だとタン氏は述べる。さらに、2026年末には36TBを超える(36TB+)HDDを、2027年末には44TBのHDDを出荷する計画だ。

 大容量化で鍵になるのが、熱アシスト磁気記録(HAMR)だ。ディスクを局所的に加熱し、記録能力を高める技術だ。Western Digitalは、HAMRの開発に大規模な投資をしていて、神奈川県藤沢市にあるウエスタンデジタルテクノロジーズの拠点でも、R&Dが活発に行われている。同社は、2026年出荷予定の36TB+ HDDには従来のエネルギーアシスト垂直磁気記録(ePMR)方式を採用するが、44TB品にはHAMRを適用する計画だ。ただしタン氏は「当面はHAMR方式とePMR方式が共存していくだろう。ePMR方式には長年の実績がある」と説明した。

 低消費電力化や、スループットの向上についても、それぞれ開発を進めている。低消費電力化では、特にモーターとプロセッサが重要になる。「モーターの開発では、日本の優れたパートナーのイノベーションを期待できる。プロセッサについてはソフトウェアの軽量化と効率化を図ることで、低消費電力化を実現できるだろう」(タン氏)。同氏は、スループットの向上については、2026年第1四半期にも何らかの発表ができる予定だと続けた。

日本には5年で10億米ドルを投資

 Western Digitalは日本への投資も強化する。ジャパンカントリーオフィサーを務める高野公史氏は、日本には今後5年間で10億米ドルを投資する計画だと説明した。同氏は、日本が特にR&D拠点として重要な理由について「日本には、スピントロニクスの研究や、金属材料などに強い機関が多数存在する」ことを挙げる。物質・材料研究機構(NIMS)や日本の大学などとの共同研究も盛んだ。

 スピントロニクスの適用例には、HDDの再生ヘッドが挙げられるという。再生ヘッドでは、極めて小さなビットから非常に微弱な信号を読み込むために高感度なセンサーが必要になる。スピントロニクスを応用すれば超高感度の磁束検出センサーを実現できるため、これを再生ヘッドに適用できるのではないかと高野氏は説明する。「磁束検出センサーなので、磁気ディスク以外にも応用が可能だ。将来的に、さまざまなビジネスへの展開も考えられる」(同氏)

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