ハイパースケーラー企業は現在、チップからアプリケーションまでAI技術スタック全体をコントロールしようとしている。そのさらなる事例として、MetaがRISC-V AIチップのスタートアップであるRivosを買収予定だと報じられている。これによってMetaは、これまで対応していなかった学習用途にも対応するとみられる。
ハイパースケーラー企業は現在、チップからアプリケーションまでAI技術スタック全体をコントロールしようとしている。そのさらなる事例として、MetaがRISC-V AIチップのスタートアップであるRivosを買収予定だと報じられている。
Metaは自社製AIチップの開発に取り組んでいるが、現時点ではまだ他社製チップに数十億米ドル規模を投じていて、その状況は今後も続くとみられている。その大半は、同社が学習と推論の両方に使用しているNVIDIA製GPUだ。
Metaは現在、世界最大規模のNVIDIA製GPUクラスタを保有していて、さらに規模の大きいクラスタの準備を進めているところだ。2026年には1GWクラスタである「Prometheus」が、そして2028年には最大5GWを消費する「Hyperion」が稼働を開始する予定だという。Metaは、この新しいクラスタにどのチップを採用するのかは明かしていないが、現状では大半がNVIDIA製で、一部にはAMD製や自社製AIチップも使われることが分かっている。
Metaはこれまでに、データセンター用AIチップを2世代にわたり開発している。RISC-Vベースの「MTIA(Meta Training and Inference Accelerator)」は、「トレーニング」という名称にもかかわらず学習は実行せず、ソーシャルメディアフィード/広告を提供するMeta社内のレコメンデーションワークロードを大規模に推論できるよう設計されている。同社は2024年に、「MTIAの範囲を拡大して生成AIに対応できるようにすることを検討している」と述べていた。
業界観測筋によるとRivosは、2024年のAppleとの訴訟が最終的に解決した後に、自社製SoC(System on Chip)の本格的な提供に向けて準備を進めてきたようだ。このSoCは、自社製64ビットRISC-V CPUと高帯域メモリ(HBM)搭載の社内GPUを備えた、チップレットベースの設計である。RivosのGPUは、大規模言語モデル(LLM)やデータ分析向けに最適化されているが、同社サイトによるとこのSoCは、MTIAが現在対応していない分野である学習ワークロードと推論の両方に対応可能だという。
Rivosのアクセラレーターは、SIMTプログラミングモデル採用のGPUなので、NVIDIA/AMD製GPUから既存コードを容易に移植できるという、他のAI製品にはない優位性を持つ可能性がある。
Rivosの取締役会メンバーであり、現在IntelのCEOを務めているLip-Bu Tan氏は、2024年のRivosのプロモーションビデオの中で「Rivosの非常に素晴らしい点は、何カ月もかけてアルゴリズムを再設計せずとも、ワークロードをプラットフォームに移行できるという柔軟性だ。同社のプラグアンドプレイソリューションは、新しいワークロードからわずか数時間で性能を提供でき、顧客が直面している重要な課題の1つを解決できるよう支援してくれる」と述べている。
今回の買収は、Rivosの設計が大規模に製造/展開され、NVIDIAまたはAMDベースのインフラから転送されたLLM学習/推論の一部に対応できるかもしれないことを意味する。もしくは、RivosチームがMTIAチームに参加し、IP(Intellectual Property)が放棄されるということを意味する可能性もある。それが明らかになるのは数年後だろう。
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