世界の自動車産業と半導体サプライチェーンを揺るがす、異例の事態が発生しました。
この記事は、2025年10月23日に発行した「モノづくり総合版 メールマガジン」に掲載されたコラムの転載です。
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世界の自動車産業と半導体サプライチェーンを揺るがす、異例の事態が発生しました。
オランダ政府は2025年9月30日(オランダ時間)、中国企業の傘下にある半導体メーカーNexperiaの経営権を掌握するという、極めて異例の措置を発動。この突然の決定を発端とした問題によって、同社からチップ供給を受ける自動車業界などで混乱が広がっています。
NexperiaはNXP Semiconductors(以下、NXP)の汎用ロジック/ディスクリート事業が前身で、2016年に中国の金融投資家コンソーシアムが約27億5000万米ドルで買収。その後2019年、現在の親会社でスマートフォン設計製造受託(ODM)および半導体事業を展開する中国Wingtech Technology(以下、Wingtech)に買収されました。
Nexperiaは欧州、アジア、米国に1万2500人以上の従業員を有し、自動車、産業機器、モバイル、民生アプリケーションまで幅広くい市場に向けて成熟半導体製品を展開。年間1100億個以上を出荷しています。各種報道によれば、特に自動車業界向けだけで年間630億個の部品を供給しているといい、世界の自動車サプライチェーンにおいて重要な一角を占めています。
そんなNexperiaに対し、オランダ政府は「深刻なガバナンス上の欠陥」を理由に「物品供給法」を発令、同社の経営権を掌握しました。同法は冷戦時代の1952年、戦争などの災害を想定して制定された法律で、非常時に重要物資の供給を確保するため、民間企業への政府介入を認めるもの。実際に適用されるのは極めて異例で、政府は次のように説明しています。
「物品供給法の発動は極めて例外的な措置だ。Nexperiaにおけるガバナンス上の欠陥が重大かつ緊急性を帯びているため、本法の適用が決定された。これらの兆候は、オランダおよび欧州域内における重要な技術的知識と能力の継続性および保護に対する脅威を呈していた。これらの能力を失うことは、オランダおよび欧州の経済的安全保障に対するリスクをもたらす可能性がある」
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