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「サステナブルな半導体製造」ってどうやるの? JASM熊本工場で見てきた熊本第一工場の環境方針を紹介(2/2 ページ)

» 2025年11月20日 12時00分 公開
[杉山康介EE Times Japan]
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徹底した管理で水リサイクル率は75%に

 JASM水処理課の山本淳二氏は「JASMでは大事な水資源を守るため、最高水準のシステムを運営している。徹底管理によって、水の使用量は世界の半導体業界の平均を大幅に下回っている」と語る。

 工場の敷地内には地下水をくみ上げるための井戸が7カ所設置されていて、必要以上の量を採取しないよう、常にモニタリングしている。より効率的な運用を行うために、水処理施設は半導体製造を行うファブ棟の地下1階に位置する。

JASMでの水の使われ方 JASMでの水の使われ方[クリックで拡大]出所:JASM

 採取した地下水は前段処理、中段処理、精錬処理によって不純物を取り除き、超純水に精製してウエハー洗浄に用いる。その後は再生処理が行われ、工場内のさまざまな場所で使われるのだが、再生回数は3回と、同じ水を計4回利用するという。これまでに使用した水量は計3万トンに及ぶが、地下水の使用料は7500トンと、水リサイクル率は75%にのぼるそうだ。

地下水は超純水に精製してウエハー洗浄に使用 地下水は超純水に精製してウエハー洗浄に使用[クリックで拡大]出所:JASM

 山本氏によると、排水処理において大事なのが「排水の分類」だという。JASMでは水を20種類、化学物質を16種類の計36種類に分類し、資源として採取する技術を確立。「日本初」(同社)の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)回収システムなどを用いて、水をきれいにすると同時に、化学物質の再利用も行っている。

計36種類に分別して処理が行われる 計36種類に分別して処理が行われる[クリックで拡大]出所:JASM

 社会問題になっている有機フッ素化合物(PFAS)についても、「PFAS管理方針」のもとで運用する。山本氏は「JASMは法令順守のもと、規制されているPFAS物質は使っていない。規制されていない短鎖PFASや、非PFAS物質への代替を行うとともに、再生処理の際は粒状活性炭で吸着し、ごく微量のレベルまで低減している」と強調した。

 計4回利用した水は浄化処理を行い、排水として下水に放流される。ここでも24時間モニタリングを行い、基準値以上の不純物が検出された際は再び浄化処理のラインに戻される。「排水は行政が厳しく管理しているが、JASMは多くの部分で、基準値の半分以下の数値を達成できている」(山本氏)

 山本氏は「JASMにとって、グリーンマニュファクチャリングは単なるスローガンではなく、日々取り組むミッションだと捉えている」と、意気込みを語った。

水処理施設の見学ツアーも行われた 水処理施設の見学ツアーも行われた[クリックで拡大]出所:JASM
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