半導体メモリの地域別市場で2番目に大きくなった中国の現状：福田昭のストレージ通信（300） 半導体メモリの行方をアナリストが解説（4）（1/2 ページ）

2025年8月に開催された「FMS（the Future of Memory and Storage）」の一般講演を紹介するシリーズ。Yole Groupのアナリストが中国のメモリ市場を解説した講演を取り上げる。

[福田昭，EE Times Japan]

半導体メモリ市場の約3割を中国が占める

　2025年8月5日〜8月7日（米国時間）に、半導体メモリとストレージに関する世界最大のイベント「FMS（the Future of Memory and Storage）」が米国カリフォルニア州サンタクララで開催された。「FMS」はキーノート講演や一般講演、展示会などで構成される。リアル参加のみのイベントであり、オンライン参加はできない。

　このほど、キーノート講演のビデオと一般講演のスライドがFMSの公式ウエブサイトで公開された。数多くある一般講演の中から、半導体メモリの市場動向と技術動向を著名なアナリストが解説した概要を、本コラムの第291回からシリーズでご紹介している。なお本記事は講演スライドの内容をご報告しているので、講演の詳細とは一致しないことがある。あらかじめご了承されたい。

　本シリーズの前回は、市場調査会社Yole GroupのシニアアナリストをつとめるJosephine Lau氏の講演概要をご紹介した。講演タイトルは「Memory Market Overview - A 2025 Update（メモリ市場の概況：2025年の更新版）」である。半導体メモリ市場の2030年を予測するとともに、HBM市場の将来を分析した。今回は、Josephine Lau氏の講演概要を引き続きお届けする。

Josephine Lau氏による講演のタイトルスライド 出所：2025 Proceedings of FMS、Yole Group

　具体的には、中国の半導体メモリ市場と中国半導体メーカーに関する分析結果を述べよう。始めは中国の半導体メモリ市場である。2024年のDRAM市場とNANDフラッシュメモリ市場における地域別割合（本社所在地ベース）で中国はいずれも、2番目の地位を占める（トップはいずれも米州）。

　DRAM市場における中国地域の比率は26％、金額は250億米ドル、NANDフラッシュメモリ市場における中国地域の比率は33％、金額は220億米ドルとYole Groupは推定した。比率ではNANDフラッシュメモリが高い。

　DRAMとNANDフラッシュメモリを単純合計すると世界全体の金額は1650億米ドル、中国地域は470億米ドルとなる。中国地域の比率は28.5％である。前回で述べたように半導体メモリ市場の97％はDRAMとNANDフラッシュメモリの合計で占められているので、半導体メモリ市場の約3割が中国地域だと理解して差し支えないだろう。

2024年のDRAM市場とNANDフラッシュメモリ市場の地域別シェア（地域は本社所在地ベース）［クリックで拡大］ 出所：2025 Proceedings of FMS、Yole Group

中国のDRAM企業とNAND企業は販売の全てが中国向け

　DRAMとNANDフラッシュメモリの主要なサプライヤーが中国で販売している金額の比率（2024年）も、Yole Groupは分析していた。Samsung Electronics、SK hynix、Micron TechnologyのDRAM大手3社の販売額に占める中国地域の比率はSamsungが高く、次いでSK hynix、それからMicronとなる。比率が最も高いSamsungでも30％前後であり、それほど多くはない。一方、中国企業のCXMTはDRAM販売の全てが中国向けだ。

　NANDフラッシュメモリは興味深いことに、大手6社全てが25％前後となっている。中国企業のYMTCは、NANDフラッシュメモリ販売の全てが中国向けである。

DRAMとNANDフラッシュメモリの主要なサプライヤーの販売額に占める中国市場の金額と比率（2024年）［クリックで拡大］ 出所：2025 Proceedings of FMS、Yole Group