アカデミアで生まれたRISC-Vは現在、AIや高性能コンピューティング(HPC)、自動車をターゲットにする産業用命令セットアーキテクチャへと進化している。特に中国やインドが技術主権の確立に向けた政府支援を背景に導入を加速している一方、欧州では投資の分散と技術者不足によってビジネス化が課題に直面している。
RISC-Vアーキテクチャがグローバル規模で急速に拡大している。中国はRISC-Vコアの出荷のうち50%を占め、多額の投資で業界をリードしている一方、欧州はサステナブルな低消費電力設計を通じて技術主権の確立を目指している。
RISC-Vは2010年にカリフォルニア大学バークレー校で誕生し、当初はアカデミアの好奇心の産物と見なされていた。しかし今では、高性能コンピューティング(HPC)、AI、自動車といった産業分野を明確にターゲットと定めている。
RISC-V InternationalのCEOであるAndrea Gallo氏は米EE Timesの取材の中で、RISC-Vの現在の戦略について「あらゆる場所で使われることを目指すのではなく、専門性とモジュール化に重点を置いている」と説明した。これは、RISC-Vが実験的な段階を過ぎ、業界に幅広く導入される段階にあることを示している。
RISC-V Internationalの2025年の年次報告書によると、RISC-Vの市場シェアは2021年の2.5%から、2031年には33.7%に上昇する見込みだという。そうした急激な成長は、RISC-Vによって自国の技術に対するコントロールを強化しようとする中国やインドのような国々によってけん引されている。
同レポートには「あらゆる主要な業界プレーヤーが、RISC-Vが今後早い時期にオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)の中で支配的な地位を得ると認め始めている。非常に多くの市場で、既に『採用されるかどうか』という段階は過ぎていて、今やテーマは『いつ、どこで、どのようにRISC-Vを採用するか』に移っている」とある。
ただし、Gallo氏は「前進することは技術の違いや検証基準、そしてさまざまな地域特性に対処するということだ」とも指摘している。
2026年にRISC-V Internationalの戦略の中核を成すのは、行列計算への繊細なアプローチだ。これは、現代のAIワークロードの数学的なバックボーンとなる。RISC-V Internationalは、モノリシックな標準規格を強いるのではなく、さまざまな電力要件や性能要件に適応する柔軟なモデルを追求している。
Gallo氏は「RISC-Vアーキテクチャは万能なわけではないが、スケーリング可能な複数の異なるアプローチが用意されている」と述べ、開発者に向けた多種多様な選択肢について説明した。これは、既存のベクトルハードウェアを活用してダイサイズを最小化できる軽量かつ統合型のマトリクス拡張から、重い計算処理のために設計された高スループットな「アタッチドマトリクス拡張」まで、多岐にわたる。
こうしたモジュール型のアプローチは、RISC-Vアーキテクチャが互換性のないグループに分かれていくことを防ぐ。Gallo氏は、異なるハードウェアを用いた場合でも、ソフトウェアインタフェースは同じままであると強調した。また同氏は「私たちはそうした柔軟性をエコシステムにもたらしている。そして、ソフトウェアレベルではそれらは全て同レベルで統合される」と述べた。さらに同氏は「PyTorchのようなツールを用いている開発者もハードウェアの違いについて懸念する必要はない」と付け加えた。
こうした技術的な柔軟性は、ISAがデータセンターに進出する上で極めて重要だ。大手クラウドプロバイダーは自社インフラへにRISC-Vを統合し始めていて、Gallo氏は、GoogleやAWSのような企業がシングルISA戦略からマルチISA環境へと移行していることを強調している。2024年後半にRISC-Vプロファイル「RVA23」が承認されたことで、エンタープライズ向けの展開に必要な基盤が提供され、オペレーティングシステムやコンパイラが標準的なターゲットを持てるようになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング