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「基盤は整った」 現場で学ぶオンデバイスAI、ロームが展開加速「Solist-AIパートナーズDay」(1/2 ページ)

ロームは2026年2月24日、オンデバイスAI「Solist-AI」エコシステムに関する成果報告や、パートナー企業の交流を目的としたイベント「Solist-AIパートナーズDay」を開催した。実証実験などを経て、2026年は市場を広げ、実装を増やす年にしたいという。

» 2026年03月02日 13時30分 公開
[杉山康介EE Times Japan]

エコシステムでSolist-AIを展開

 ロームは2026年2月24日、オンデバイスAIソリューション「Solist-AI」エコシステムに関する成果報告や、パートナー企業の交流を目的としたイベント「Solist-AIパートナーズDay」を開催した。

 Solist-AIは、ロームが2025年3月から展開するエッジコンピューティング分野に向けたオンデバイスAIソリューションだ。一般的なエッジAI機器がクラウドやサーバ上で学習し、端末側で推論するのに対し、Solist-AI搭載機器は端末のみで学習から推論まで実行できる。

 Solist-AIのメインターゲットは産業機器のロングテール市場で、少量多品種の製品が市場に分散している、現場ごとに導入や運用の条件が異なるなどの理由から、導入から運用までローム単独でカバーすることが難しい。そこでロームは、パートナー企業と連携して、おのおのの得意分野を生かすエコシステムとして、Solist-AIを展開する。

 展開からおよそ1年が経過したタイミングで、成果報告やパートナー企業同士の交流を目的として、Solist-AIパートナーズDayを開催した。2026年2月24日時点で17社がエコシステムのパートナーとして参画するうち、16社が本イベントに参加したという。

Solist-AIエコシステム構想Solist-AIエコシステム参画パートナー企業 左=Solist-AIエコシステム構想、右=Solist-AIエコシステム参画パートナー企業[クリックで拡大] 出所:ローム

「現場で再学習」がエッジの精度を高める

ローム LSI開発本部 回路技術開発部 先進技術開発担当フェローの西山高浩氏 ローム LSI開発本部 回路技術開発部 先進技術開発担当フェローの西山高浩氏

 Solist-AIのベースとなるのは、慶応義塾大学 理工学部の松谷宏紀教授が作り上げたオンデバイス学習アルゴリズムだ。松谷氏の講演を聞いたロームがアプローチして、2019年より共同研究を開始。松谷氏のソフトウェアを、ロームが1チップのマイクロコンピュータ(MCU)に落とし込み、製品化に至った。

 ロームのLSI開発本部 回路技術開発部 先進技術開発担当フェローの西山高浩氏は「デバイス上で学習するAI、という発想にふれたとき、これからのエッジAIの考え方そのものを変える可能性を強く感じた。パートナー企業とともにSolist-AIの可能性を広げていくことで、インフラの老朽化や人手不足といった社会課題に貢献できると確信している」と語る。

慶応義塾大学 理工学部の松谷宏紀教授 慶応義塾大学 理工学部の松谷宏紀教授

 続いて松谷氏が登壇し「例えば産業機器のシステム監視の場合、従来のエッジAIだと、機器の取り付け角度や個体差によって検出値が微妙に変わってくる。またクリーン環境の条件下でデータ学習をしても、実際の現場が騒音などでノイジーな場合、期待した精度が出ない場合もある。対してオンデバイスAIなら、現場に設置した状態でデータ学習をするため、高精度な異常検知が可能だ」と、オンデバイスAIのメリットを説明する。

 「現場での再学習という考え方は応用もできる。例えばカメラを使った外観検査をエッジAIで行うにあたって、カメラ毎の個体差や設置場所の影響などをファインチューニングで解消する必要がある。従来のエッジAIではファインチューニングに114秒かかったところ、オンデバイスAIは4.27秒で完了したうえ、FPGAでファインチューニングの部分を専用回路化したときは0.34秒で完了できた」(松谷氏)

 松谷氏は「今後の方向性として、フィジカルAIに資する高度なAI技術開発が急務だ。大規模言語モデル(LLM)や画像生成など、より複雑なモデルを、いかに現場で軽量化し、学習できるかが課題になる」とする。

オンデバイス学習の今後の方向性 オンデバイス学習の今後の方向性[クリックで拡大]出所:ローム

 「エッジAIは、クラウドAIへの価値の一極集中を避けるために、エッジデバイスに付加価値を持たせるアプローチともいえる。従来のエッジAIはサーバ、クラウド上で事前学習をする前提のため、学習部分がブラックボックスのような状態だ。ユーザー自身の環境に合わせた学習ができ、透明度の高いオンデバイスAIは、フィジカルAI時代の新たな付加価値になると期待している」(松谷氏)

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