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ロームがAI機能搭載マイコンを開発、学習と推論を単体で完結AI処理を1000倍高速化(1/2 ページ)

ロームが、ネットワーク不要で、学習と推論を単体で完結するAI機能搭載マイコンを開発した。産業機器をはじめあらゆる機器でセンシングデータを活用した故障予兆検知や劣化予測が実現できるという。

» 2025年03月18日 17時30分 公開
[永山準EE Times Japan]

 ロームは2025年3月18日、ネットワーク不要で、学習と推論を単体で完結するAI機能搭載マイコン「ML63Q253x-NNNxx」および「ML63Q255x-NNNxx」を開発したと発表した。モーターなどの産業機器をはじめあらゆる機器でセンシングデータを活用した故障予兆検知や劣化予測が実現できるという。

独自技術のAIアクセラレーター、AI処理を約1000倍高速に

 AIの処理モデルは現在、クラウド型AI、エッジ型AI、エンドポイント型AIに分類される。クラウド型AIはクラウド上で、エッジ型AIはクラウド上および工場設備やPLCにAIを搭載しネットワークを利用して学習と推論を行う。一般的なエンドポイント型AIは、推論は端末機器で実行するものの、学習はクラウドで行うためネットワーク接続が必要となる。また、これらの処理モデルではソフトウェアで推論を行うため、GPUや高性能CPUが求められる。

 ロームは、エッジコンピューティング分野に向けたオンデバイスAIソリューション「Solist-AI(Solution with On-device Learning Ic for STandalone-AI)」を開発していて、今回のAIマイコンはこのSolist-AIを実現するマイコン第1弾となる。Solist-AIは、独自に開発したオンデバイス学習AI技術によって、クラウドサーバに依存せず、エッジデバイス単体でリアルタイムの学習/推論処理を可能にするAIソリューション。クラウド不要/ネットワーク接続なしでエンドポイントでの学習と推論が完結するため、ハードウェア処理でAI処理負荷を削減、高性能CPUが不要といったメリットがある。

 具体的には、AIマイコンは、オンデバイスで学習と推論を行う3層ニューラルネットワークのAIアクセラレーター「AxlCORE-ODL」を搭載した。独自技術である同AIアクセラレーターは、従来のソフトウェア方式(条件:12MHz駆動時での理論値)を採用したローム製マイコンと比較し、AI処理を約1000倍に高速化でき、リアルタイムで異常を検知し数値として出力するという。

AIが正常を学習し、「いつもと違う」を数値化して出力エンドポイントで学習と推論が完結する 左=AIが正常を学習し、「いつもと違う」を数値化して出力する/右=エンドポイントで学習と推論が完結する[クリックで拡大] 出所:ローム

 上記の機能によって、AIマイコンは機器の設置場所での高速学習(現場学習)が可能となり、高温/常温環境に対応した推論を実現。ノイズや振動、温湿度などの設置場所の環境の違いおよび、同一機種でのばらつきを吸収可能なほか、学習用データの準備が不要といったメリットがある。これによって、ファンモーターの異常振動の検知など、あらゆる機器でセンシングデータを活用した故障予兆検知や劣化予測を可能にするとしている。

AIマイコンのメリットAIマイコンの活用事例 左=AIマイコンのメリット/右=AIマイコンの活用事例[クリックで拡大] 出所:ローム
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