東北大学の研究グループは、筑波大学や佐賀大学との共同研究により、酸化亜鉛の欠陥構造を制御することで、高価なレアアースを使わずに極めて高い感度の「応力発光」を実現した。電源不要の近赤外発光は、医療センサーやインフラ診断などへの応用が期待される。
東北大学大学院工学研究科の徐超男教授らによる研究グループは2026年5月、筑波大学や佐賀大学との共同研究により、酸化亜鉛の欠陥構造を制御することで、高価なレアアースを使わずに極めて高い感度の「応力発光」を実現したと発表した。電源不要の近赤外発光は、医療センサーやインフラ診断などへの応用が期待される。
応力やひずみ、振動といった機械的エネルギーを光に直接変換する応力発光材料は、自立型センサーの材料として注目されている。ところが実用レベルの強い発光を得るためにはこれまで、高価なレアアースや複数の元素を用いなければならなかった。しかも、発光させるためギガパルス級の力を必要としていた。
研究グループは今回、酸化亜鉛に注目した。安全性が高く安価なことから、化粧品や日焼け止め、軟膏の成分として用いられてきた材料である。半導体特性や発光特性にも優れているという。研究グループは、酸化亜鉛の電子状態をナノレベルで制御する「欠陥エンジニアリング」を駆使し、高感度で発光する新材料の開発に成功した。レアアースは一切用いていないという。
開発した新材料を電子顕微鏡で観察し、粒子表面にクレーター状の特殊な凹凸構造が形成されていることを確認した。この形状によって、外部から加えられた力を効率よく吸収し、材料内部のひずみに変換する。これが高感度な発光につながったとみている。
研究グループは、東北大学金属材料研究所のスーパーコンピュータ「MASAMUNE-弐」を用いて第一原理計算を行い、酸化亜鉛の電子状態を解析した。微量のナトリウムを添加したことで、電荷を一時的に蓄える安定した欠陥構造が、酸化亜鉛の結晶に形成されることが分かった。しかも、近赤外発光は亜鉛原子が抜けた欠陥(亜鉛空孔)に由来することを突き止めるなど、発光メカニズムも解明した。さらに、今回開発した酸化亜鉛はp型の挙動を示すことも明らかにした。
開発した材料は、数キロパスカルという指先で触れる程度の力でも、繰り返し発光する現象が確認できたという。このため、超音波など外部からの微弱な振動により、体内の応力発光体を無電源で発光させれば、生体情報の読み取りなどに活用できることが分かった。
研究グループは今後、関連する企業や研究機関に対し開発した材料のサンプル品を提供していく。また、量産する材料メーカーやデバイス・システムメーカー、医療・検査機器メーカーなどとの共同開発を通じて、早期実用化を目指す。
今回の研究成果は徐超男教授の他、東北大学大学院工学研究科の内山智貴助教、音成航希大学院生(当時)、大森令央奈大学院生、楊光発大学院生、佐賀大学の鄭旭光教授(東北大学大学院工学研究科特任教授)、筑波大学の西堀英治教授、東北大学グローバルラーニングセンターの陳迎特任教授らによるものである。
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