東北大学や日本原子力開発機構らによる研究グループは、等方性磁石の薄膜を使って作製した素子に電流を印加し、不安定な方位に磁石の向き(スピン)を安定化させることに成功した。電流と外部磁場の大きさを調整すれば、スピンの揺らぎを最大化できる。この動きは連続的な変数を用いる制限ボルツマンマシンの動作原理に適用できるとみている。
東北大学や日本原子力開発機構らによる研究グループは2026年3月、等方性磁石の薄膜を使って作製した素子に電流を印加し、不安定な方位に磁石の向き(スピン)を安定化させることに成功したと発表した。電流と外部磁場の大きさを調整すれば、スピンの揺らぎを最大化できる。この動きは連続的な変数を用いる制限ボルツマンマシンの動作原理に適用できるとみている。
スピントロニクスは、電気的性質と磁石の性質を利用する研究分野。電源を切っても情報が消えない不揮発性メモリ「MRAM(磁気ランダムアクセスメモリ)」などが実用化されている。こうした中で、不揮発性を排除しスピンがあらゆる方位を向くことができる等方性を活用すれば、情報を2値ではなく連続的な値として処理することが可能になるという。
研究グループは今回、非磁性層と強磁性層を組み合わせた薄膜を用いて、等方性磁石を作製した。W非磁性層とCoFeB強磁性層、MgO層からなる薄膜を熱処理すると、膜面垂直方向の磁気異方性が出現する。熱処理条件を適切に設定すれば、その大きさを調整できる。これにより、膜面内方向にも垂直方向にも同じように向きやすいW/CoFeB/MgO薄膜を作製できるという。
このW/CoFeB/MgO薄膜を用いて素子を試作し、電流を印加してスピントルクに対する応答を調べた。外部磁場でスピンを一方向に固定した状態で、反対方向に磁化反転させようとするスピントルクを加えた。そうしたところ、スピンがエネルギー極大となる状態に安定化される「磁化の動的な安定化」という現象を確認できた。数値計算によっても再現され、動的安定化に至る過程で、電流によるスピンの揺らぎが最大化されていることが分かった。
研究グループは、等方性による大きなスピンの揺らぎは、連続変数として演算などに利用できる可能性があるとみている。そこで、制限ボルツマンマシンによる画像生成に応用しその性能を評価した。この結果、連続変数を用いると、バイナリ変数を使う場合に比べ性能が向上することを実証した。
今回の研究成果は、東北大学金属材料研究所および先端スピントロニクス研究開発センターの紅林秀和教授と関剛斎教授、日本原子力研究開発機構原子力科学研究所先端基礎研究センターの山本慧研究副主幹らによるものである。
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