まず、何人かの市場アナリストが指摘しているように、リソグラフィ装置の価格は、商用スペックとはほとんど無関係だという点がある。ニコンの液浸スキャナーの価格は、既にASMLの同等製品と比べて2桁パーセント低いが、それでもニコンの市場シェアは依然として縮小しているという。
これが、ニコンがASML製スキャナーに技術的に匹敵する、全く新しい液浸スキャナープラットフォームの開発を目指す理由の1つである。ニコンの次世代スキャナーは、ASMLのマスクミラーリングに対応すべく、新しい投影レンズを搭載するという。ニコン製スキャナーの既存マスクは、ASML製品で共有することができない。
また、この次世代スキャナーは、新しいウエハーステージを導入する予定で、ウエハーステージのハードウェアを修正できるようになるため、ファブは複数種類のスキャナーを使わなくて済むという。しかし前述のように、この新型スキャナーは、2028年に発表予定のため、競争の激しいリソグラフィ分野ではその間にさまざまな状況変化が起こる可能性がある。
次に、定着要因が挙げられる。TSMCのようなファブには、ASMLとの長年にわたる協業実績があり、ASML製部品/システムを自社の製造エコシステムに統合する上で、高度な技術的専門知識を確立してきた。もし、安価な装置があるとしても、導入に2倍のコストが掛かる、必要な歩留まりを達成できない、といった事態があるとしたらどうだろうか。
最後に、多くの業界関係者が指摘しているように、ニコンの浮き沈みは、過去約20年間における日本の半導体業界全体の事象を反映しているという点がある。振り返ってみると、キヤノン/ニコンのような日本の半導体/半導体装置メーカーは、ともに衰退してきた。ニコンはこの減速傾向を覆すことができるのだろうか。
リソグラフィが急速に進化を遂げる中、ニコンは、大手サプライヤーや研究機関との密接な連携による復活実現に賭けて出た。しかし、リソグラフィ業界におけるASMLの「勝者独占」ストーリーを覆すことは可能なのだろうか。特に、DUVをめぐる競争において、世界各国で8000台超の半導体リソグラフィシステムが設置されている紛れもないリーダーであるASMLに敗北した後でだ。
それでも、ニコンには方向転換が必要だ。販売価格約8250万米ドルのASML製最先端ArF液浸システムに、チャンスを見いだすことができる。それに加え、全てのEUV装置には通常、数台のDUV装置が付属するという事実もある。また、ニコンの積極的な価格競争への戦略転換により、半導体メーカーはより効果的にASMLとの交渉を進められる可能性がある。
ニコンは自らを、ASMLのみへの依存を避けたいと考えている半導体ファブにとっての“セカンドソースオプション”として位置付けている。ニコンが今後、装置の低価格化とセカンドソースオプションでファブを引き付けられるかどうか、注目していきたい。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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