量子科学技術研究開発機構(QST)と兵庫県立大学および高輝度光科学研究センター(JASRI)らによる研究グループは、東京科学大学やNTTと共同で、レーザー光パルス照射により、電子スピンの向きを書き換えることができる「磁気メモリ材料」を開発した。電流によって電子スピンの向きを反転させる従来方式に比べ、約1000倍も高速な動作が可能となる。
量子科学技術研究開発機構(QST)高崎量子技術基盤研究所量子機能創製研究センターの境誠司グループリーダーと兵庫県立大学および高輝度光科学研究センター(JASRI)らによる研究グループは2026年6月、東京科学大学やNTTと共同で、レーザー光パルス照射により、電子スピンの向きを書き換えることができる「磁気メモリ材料」を開発したと発表した。電流によって電子スピンの向きを反転させる従来方式に比べ、約1000倍も高速な動作が可能となる。
磁気メモリは、電子スピンの向きを情報として記憶し、その向きを反転させることで情報を書き換える。記録した情報は無電力で保存でき、書き換えに必要なエネルギーも小さい、という特長がある。一方、電流でスピンを反転させる従来方式は、書き込み動作速度の限界や、発熱による消費電力の増大といった課題もあった。
研究グループは今回、光によって電子スピンが反転される「フェリ磁性体」に着目した。ただ、これまで用いられてきた磁性材料「コバルト・鉄・ホウ素(CoFeB)」では、この現象が起きないため、新たに「人工フェリ磁性体」を設計し成膜をした。
具体的には、CoFeBにガドリニウム(Gd)やコバルト(Co)といった異なる磁性材料を積層し、原子レベルで構造を最適化した。各層の厚みは0.1nm以下の精度で制御し、多層構造全体の厚みは10nm以下とした。この結果、超短パルスレーザーによる光パルスを1回照射しただけで、CoFeBを含む各層のスピンが一斉に反転した。光パルス照射を繰り返し行っても、安定して再現できることを確認した。
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