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京大やトヨタなど、全固体フッ化物イオン二次電池用正極材料を開発主成分は鉄、カルシウム、酸素

京都大学らの研究グループは、量子科学技術研究開発機構や東京大学、兵庫県立大学、東京科学大学および、トヨタ自動車らと共同で、全固体フッ化物イオン二次電池用の高容量インターカレーション正極材料を新たに開発した。ペロブスカイト酸フッ化物が、既存のリチウムイオン二次電池正極材料に比べ2倍を超える可逆容量を示すことが分かった。

» 2025年06月23日 15時45分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

可逆容量はリチウムイオン二次電池正極材料の2倍を超える

 京都大学らの研究グループは2025年6月、量子科学技術研究開発機構や東京大学、兵庫県立大学、東京科学大学および、トヨタ自動車らと共同で、全固体フッ化物イオン二次電池用の高容量インターカレーション正極材料を新たに開発したと発表した。ペロブスカイト酸フッ化物(Ca0.8Sr0.2FeO2Fx)が、既存のリチウムイオン二次電池正極材料に比べ2倍を超える可逆容量を示すことが分かった。

 全固体フッ化物イオン二次電池は、フッ化物イオン(F-)をキャリアとして用いており、高いエネルギー密度や高入出力密度、高い安全性を実現できるという。ただ、F-のインターカレーション反応を用いる正極材料は、利用できる容量が小さいという課題があった。

 研究グループは今回、鉄やカルシウム、酸素を主成分とするCa0.8Sr0.2FeO2Fxが、結晶構造から予想されるより、はるかに多くのF-を可逆的に挿入可能であることを見出した。この結果、580mAhg-1という高い容量が得られることを明らかにした。

 実験では、大型放射光施設「Spring-8」でX線吸収分光法や共鳴非弾性X線、X線回析などを用い、F-挿入・脱離反応機構を詳細に解析した。この結果、遷移金属カチオンに加えて、酸化物イオンが電荷補償を担っており、この時に構造内では酸素分子結合が形成され、多量のF-挿入を可能にしていることを確認した。しかも、その時の体積変化率は極めて小さく、高容量・高サイクル特性につながっていることが分かった。

開発したSrFeO2FxとCa0.8Sr0.2FeO2Fx正極および、既存の正極材料における重量当たりの容量と体積当たりの容量を比較[クリックで拡大] 出所:京都大学他 開発したSrFeO2FxとCa0.8Sr0.2FeO2Fx正極および、既存の正極材料における重量当たりの容量と体積当たりの容量を比較[クリックで拡大] 出所:京都大学他

 今回の研究成果は、京都大学大学院人間・環境学研究科の山本健太郎特定准教授(現在は奈良女子大学研究院工学系准教授)、内本喜晴教授らの研究グループと、量子科学技術研究開発機構、東京大学、兵庫県立大学、東京科学大学および、トヨタ自動車らによるものである。

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