――AI向けを中心に先端パッケージングの重要性が高まっています。市場や技術の方向性をどのように見ていますか。
小野寺氏 大型化のニーズは非常に強い。既に顧客の製品では5.5レチクルサイズのものがあり、今後さらに大きくなっていくだろう。大型化が進むと、円形のウエハーでは生産効率が不十分だ。そのため、かなり先の話にはなると思うが、パネル型の基板を使う方向性にも進んでいくだろう。
パッケージの大型化には、基板やインターポーザーも非常に重要になる。日本企業はこうした分野で強みを持っているので、連携して評価や開発を進めている。
――2021年3月に設立した「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」(つくば市)は、どのような役割を担っていますか。
小野寺氏 同センターは、日本企業と協力して次世代の先端パッケージ技術を開発し、その成果をグローバル市場へ展開することを目指す場だ。材料の評価や、日本の顧客、パートナー企業とのやりとりにおいて、非常に重要な役割を担っている。
同センターを立ち上げた当初、協業する日本企業は40社ほどだったが、現在は約120社に上る。日本国内に窓口とクリーンルームがあり、何かあればすぐに評価できる環境を整えたことで、より多くのパートナーと密接かつ効率的に共同評価や開発を進められるようになった。
――TSMCのグローバル戦略において、日本はどのような位置付けでしょうか。
小野寺氏 日本は非常に重要な地域だ。2020年からデザインセンターを設置し、3DIC研究開発センターや熊本工場も立ち上げてきた。これらは日本の顧客を支援すると同時に、グローバルの顧客にも開かれた環境だ。日本国内だけに閉じた拠点ではない。
例えば、日本のデザインセンターは日本の顧客だけを担当しているわけではない。台湾本社や他地域のデザインセンターと連携し、世界の顧客の設計を支援している。日本のデザインセンターが、海外企業の大規模なチップの製品化に貢献するケースもある。
熊本工場も同様で、基本的にはグローバルの顧客が利用できる仕組みだ。TSMCの生産能力の一部が日本にもあり、日本の工場から世界の顧客の需要を支えるというモデルになっている。
そもそも日本の顧客もグローバル企業であり、世界に製品を販売している。日本の顧客、海外の顧客と単純に区別するというより、全体としてグローバルなビジネスだと考えている。
――各国が半導体の域内生産能力を重視しています。地政学的な変化は、TSMCが海外投資を進める理由になっているのでしょうか。
小野寺氏 地政学的な変化を受けて海外投資を始めたわけではない。地政学的な問題は後から大きくなってきたもので、投資の出発点は、あくまで顧客のニーズと長期的な需要の拡大にある。アリゾナや熊本の工場は、長期的な視点に立ってグローバル化を進める中で計画したものだ。顧客の需要が拡大する中、台湾では継続して投資を行い、それに加えて米国、日本、欧州でも生産能力を整備していくという大きな流れがある。一方、供給体制をグローバルに分散したいという顧客のニーズが高まる中、日本に拠点があることは顧客にとって魅力の1つになっているだろう。
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