名古屋大学は、酸フッ化物固体電解質として、ミリメートルサイズの単結晶育成に成功するとともに、最高値となるバルクリチウムイオン伝導率を達成した。高性能な全固体リチウムイオン電池の開発に期待する。
名古屋大学大学院工学研究科の矢島健准教授や高澤千佳博士前期課程学生、佐藤大介博士前期課程学生(当時)、入山恭寿教授らによる研究グループは2026年8月、酸フッ化物固体電解質として、ミリメートルサイズの単結晶育成に成功するとともに、最高値となるバルクリチウムイオン伝導率を達成したと発表した。高性能な全固体リチウムイオン電池の開発に期待する。
全固体リチウムイオン電池は、固体電解質のリチウムイオン伝導性が、電池の出力や充放電速度に大きく影響する。こうした中、固体電解質として注目されているのが酸化物やフッ化物である。一方でリチウムイオン伝導率の低さなどが課題となっていた。
研究グループは今回、パイロクロア型酸フッ化物「Li2-xLa(1+x)/3Nb2O6F(LLNOF)」に着目した。既に多結晶体のLi1.25La0.58Nb2O6Fでは、室温で7.0mScm-1というリチウムイオン伝導率が報告されているという。ただ、多結晶試料のためリチウムイオン伝導率と組成依存性については十分に解明されていなかった。
そこで研究グループは、LLNOFでミリメートルサイズの単結晶を育成し、バルクリチウムイオン伝導率と組成依存性および、その結晶構造を調べた。この結果、イオン伝導特性は25℃で12.0 mScm-1となり、多結晶体の値を上回った。異なる2つの結晶方位でリチウムイオン伝導率を測定したが、その差はほとんど見られなかったという。
次に、組成が異なる単結晶を育成し、それぞれのイオン伝導特性を評価した。xが減少するとリチウムイオン伝導率が上昇し、活性化エネルギーは低下した。x=0.61の単結晶では、バルクリチウムイオン伝導率が25℃で最大16.3 mScm-1となり、「世界最高値を達成した」という。
さらに、高速イオン伝導の起源を解明するため、単結晶X線回析による精密結晶構造解析を行うとともに、差フーリエ解析と最大エントロピー法によるフッ化物イオン周辺の電子密度を調べた。この結果、フッ化物イオンは周囲のLi(リチウム)やLa(ランタン)、空孔からなる四面体の中心から約0.32Åずれた位置を局所的にとることが分かった。
Liイオンが空孔へ移動するとLiイオンと空孔の位置が入れ替わり、空孔方向に選択されるフッ化物イオンの安定位置も切り替わる。こうしたLiイオン移動に連動するフッ化物イオンの局所緩和が、LLNOFの高速イオン伝導を支える機構となっていることを結晶構造解析によって示した。
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