集中型のコンピュートアーキテクチャへの移行に伴い、高速かつ低レイテンシの通信インタフェースが重要な設計要件になりつつある。一般的なヒューマノイドシステムは、最大10個のカメラと、慣性センサー/力センサー/トルクセンサー、手の触覚アレイセンサー、マイクロフォン、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、30〜60個ものアクティブジョイントなどを搭載する。
これらのコンポーネントは、大量の重要データを生成するため、それを集中型プロセッサでリアルタイムで伝送、同期、処理しなければならない。コネクティビティの課題を解決するには、帯域幅だけでは不十分だ。集中型コンピュートモデルを実現するためには、センサー間で正確な同期を行い、ビジョン/慣性センシングや、触覚フィードバック、力測定、関節位置データなどが予測可能なレイテンシと高精度なタイムスタンプで到着し、それを融合することで、ロボットとその環境を一貫性のある表現で示す必要がある。センサー数が増加するに伴い、効率的かつ信頼性のあるデータ伝送が、生のインタフェース帯域幅と同じくらい重要になる。
既存のプロトタイプのヒューマノイドでは、EtherCATやCAN-FDなどのレガシーな産業/自動車用通信インタフェース技術が使われいている場合が多いが、その理由としては、隣接産業で同じ設計課題に対応していることや、決定論的性能を提供していること、成熟したソフトウェアエコシステムから利益を享受できることなどが挙げられる。しかし、このようなインタフェースの開発をけん引した要件は、次世代のヒューマノイドアーキテクチャを推進する要件とは異なっている。例えば、産業通信インタフェースは、長距離ケーブル配線や、それぞれ無停電電源装置(UPS)を備えた大量の分散型コントローラー間の通信などに向けて最適化されている
ヒューマノイドロボットでは、全く異なる要件が提示される。例えば、短い通信距離や、バッテリー駆動型、厳しいEMC要件の他、ケーブル/コネクター要件はさらに厳格で、わずか1gの重量の差がエネルギー消費量やパッケージング、機械的設計などに影響を及ぼす。さらに、ヒューマノイドのデータトラフィックの種類は、レガシーなロボットシステムとは異なり、同期されたセンサーデータは、広く分散されたシステム全体にではなく、集中型AIプロセッサに送られる。そこでの課題は、もはや単にシステムコンポーネントの決定論的なネットワーキングを実現することではなく、消費電力量や配線の複雑さ、物理的寸法などを最小限に抑えながら、高帯域幅かつ低レイテンシの通信を提供することである。
これは、レガシーな産業ネットワーク技術がいずれ消滅するという意味なのではなく、そのような技術が、次世代の集中型のヒューマノイドアーキテクチャ分野のあらゆる通信ニーズに対して、最適なソリューションではなくなる可能性があるということを浮き彫りにしているのだ。
MIPI Allianceは過去20年間にわたり、モバイル業界向けにインタフェースを開発してきたが、これは現在、ヒューマノイドシステムの分野に出現しているものと同様の通信関連の課題に対応している。スマートフォンでは、複数のカメラやディスプレイ、マイクロフォン、ストレージデバイス、センサーなどがバッテリー駆動の小型システムに組み込まれており、帯域幅や消費電力量、EMC、熱性能、物理的インテグレーションなどが強い制約を受けている。
これらの要件は、次世代ヒューマノイドの要件とよく似ており、以下のような例が挙げられる。
標準化されたインタフェースの使用は、電気的性能だけでなく、半導体ベンダー、センサーメーカー、AI開発者、ソフトウェア企業、ヒューマノイドの委託製造者といったさまざまな企業を統合したエコシステムを構築するというメリットをもたらす。さらに、インタフェース規格は、実績のあるシリコンIP(Intellectual Property)、ソフトウェアサポート、検証ツールを提供し、サプライヤー間の相互運用性を向上させ、統合作業の負担を軽減することにもつながる。
過去10年間、MIPIの組み込みインタフェースは、PC、自動車、産業機器、家電製品、IoTなど、関連市場で広く利用されてきた。ヒューマノイドアーキテクチャも同様に、MIPIの標準化されたインタフェースを利用することで、ビジョン、センシング、ストレージ、オーディオ、制御システムに必要な帯域幅、レイテンシ、電力要件を満たしつつ、プラットフォーム間の相互運用性を維持できると考えられる。
フィジカルAI BoFグループは現在、将来のヒューマノイドアーキテクチャをサポートし、必要なインタフェース開発を特定するために、ビジョン用のCSI-2、センサー接続用のI3C、ディスプレイ用のDSI-2、オーディオ用のSoundWire I3S(SWI3S )、M-PHYとUniProに基づくUFSストレージおよび、セキュリティフレームワークを含むMIPIの既存の仕様を評価している。
第1世代のヒューマノイドは、近年のAIの進歩が何を実現できるかを実証した。次世代の商業的に実現可能なヒューマノイドの特徴は、より効率的なシステムアーキテクチャと拡張性といえるのではないか。標準化された組み込みインタフェースを使用することで、開発者はシステム設計を最適化し、幅広い半導体エコシステムを活用できる。何よりも、コネクティビティの課題解決に時間を費やすのではなく、競合製品との差別化を図る機能の開発に集中できるようになるのだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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