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「サービスロボットの浸透」 なぜ米国は待ち望むのか「CES 2026」で読み解く――サービスロボットの分水嶺(1)(1/2 ページ)

「CES 2026」の主役は、ヒューマノイドロボットをはじめ、ありとあらゆる“働くロボット”だったと言っても過言ではない。本連載では、今回のCESで展示されたロボットを振り返りながら、「サービス産業の現場」という視点で、米国でサービスロボットの導入が進む背景や、日本がサービスロボット分野で取るべき戦略について考察する。

» 2026年03月30日 11時00分 公開

 「ロボットはChatGPTと同じような転換点を迎えている」――。2026年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2026」の基調講演で、NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏ははそう宣言した。さらにNVIDIAは、Boston Dynamics、Caterpillar、LGなどとのパートナーシップも発表した。ことしのCESにおいて「ヒューマノイドロボット」と「フィジカルAI」が最大の注目テーマであったことは間違いない。

 しかし、筆者は今回、あえて別の視点でCESを歩いてみた。「サービス産業の現場」という視点だ。

 CES 2026には4100社以上が出展し、14万8000人以上が来場した。華やかなヒューマノイドロボットのデモンストレーションが注目を集める一方で、会場のあちこちで地味ながら着実に進化を遂げている「働くロボット」たちを見ることができた。配膳ロボット、清掃ロボット、搬送ロボット――。これらは派手さでは劣るものの、すでに実用化フェーズに入り、ROI(投資対効果)が見えやすい領域で導入が進んでいる。

 人手不足が深刻化する中、ロボットやAIがどのようにサービス業を変えようとしているのか。そして、メーカーやサプライヤーはどのような考え方でこの市場に参加すればよいのか。本連載では、その考察を3回にわたってお届けする。まずは、CESで見た「特定の仕事をこなすロボットたち」から紹介していこう。

後述する、米Dyna Roboticsのロボット。洗濯物をたたんでいる[クリックで拡大] 後述する、米Dyna Roboticsのロボット。洗濯物をたたんでいる[クリックで拡大]

CESで見たサービス産業向けロボットたち

 ヒューマノイドロボットの紹介に入る前に、CES 2026の会場で見つけた「特定の仕事をこなすロボットたち」をいくつか紹介していく。これらは派手さでは劣るものの、既に実用化フェーズに入っているものが多い。

(1)搬送・運搬ロボット

 会場を歩いていると、至るところで見かけたのが自律走行する搬送ロボットだ。米TechForce Roboticsをはじめとする各社が展示していたこれらのロボットは、自律走行技術、ドア・エレベーター連携、AI×IoT×建物システムという3つの要素技術を組み合わせている。

 特筆すべきは、建物のインフラとの連携が進んでいる点だ。単独で動くのではなく、エレベーターを呼び出し、自動ドアを開閉し、施設管理システムと連動することで、人間の補助なしに施設内を移動できる。ホテルのルームサービスや病院内の物資搬送など、すでに実用化されている事例も多い。

TechForce Roboticsのデモ

(2)清掃・メンテナンスロボット

 清掃ロボットは、サービスロボットの中で最も成熟した分野の一つだ。床清掃ロボットは既に多くの商業施設で稼働しており、ラスベガスのホテルでもそこら中で動いていた。中国KEENON Robotics(以下、KEENON)の「C40」や「C55」のように、さまざまな床面に対応した自律清掃を行うモデルが展示されていた。

KEENON Roboticsの清掃ロボット

 興味深かったのは、より難易度の高い清掃タスクへの挑戦だ。シンガポールのPrimech AIはトイレ掃除ロボット「HYTRON」を展示し、これまで自動化が難しかった衛生設備の清掃に挑んでいる。また、米Dyna Roboticsは洗濯物を畳むロボットを披露していた。屋外分野では、Segwayが最大1.5エーカー(約6000平方メートル)を手入れできる自律式芝刈りロボット「Navimow」を発表。オーストラリアWYBOTは自動ロボットプールクリーナー「WYBOT S3」を発表した。家庭用から商業用まで、清掃の自動化は着実に領域を広げている。

Primech AIのトイレ掃除ロボット(左)WYBOTのプール掃除ロボット Primech AIのトイレ掃除ロボット(左)と、WYBOTのプール掃除ロボット[クリックで拡大]

(3)フロントエンドロボット

 飲食・ホスピタリティ分野では、配膳ロボットが最も普及している。KEENONの配膳ロボット「T10」は、狭いスペース(59cm幅)での自律走行と障害物回避を実現した。音声・タッチ・視覚を統合したインタラクションで、来店客を楽しませながら料理を届ける。

 米Richtech Roboticsの「ADAM」は、バリスタ兼バーテンダーロボットとして注目を集めた。カクテルやコーヒーを提供するだけでなく、調理パフォーマンス自体がエンターテインメントになる。同社はNASDAQ上場企業であり、ホスピタリティから工場まで幅広い分野でAI駆動ロボットを展開している。

 さらに進んだ形態として、米VenHubはロボットアームを使った無人小型店舗を展示。中国XBOTは省スペースで設置可能なコーヒーマシンやアイスクリームマシンを提案していた。これらに共通するのは、「均一品質」と「演出価値」の両立だ。人手に頼らず一定のサービス品質を維持しつつ、ロボットが動く様子そのものが集客につながる。

VenHubの無人小型店舗(左)XBOTのコーヒー/アイスクリームマシン VenHubの無人小型店舗(左)と、XBOTのコーヒー/アイスクリームマシン[クリックで拡大]
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