深層学習を正しく理解するのは困難を極めます。ですが、あるパラダイムで考えると、大変に分かりやすくなるのです。そのパラダイムとは、これまであらゆるテクノロジーの進化と発展をけん引してきたと言っても過言ではない、最も偉大なるコンテンツ――そう、「エロ」です。【追記あり】
今、ちまたをにぎわせているAI(人工知能)。しかしAIは、特に新しい話題ではなく、何十年も前から隆盛と衰退を繰り返してきたテーマなのです。にもかかわらず、その実態は曖昧なまま……。本連載では、AIの栄枯盛衰を見てきた著者が、AIについてたっぷりと検証していきます。果たして”AIの彼方(かなた)”には、中堅主任研究員が夢見るような”知能”があるのでしょうか――。【追記あり:2018年6月5日午後12時55分】⇒連載バックナンバー
【その1】
成人向けの雑誌の中でも特に性的な娯楽要素を扱う分野の書籍および雑誌が、いまだにコンビニなどで販売されていることについて、私は、ビジネスモデルの面(×倫理面、×教育面)から、不思議に思ってきました。
インターネットを使えば、ほぼ無限と言っても過言ではないほどのエロコンテンツにアクセスできる現代にあって、数々の障壁(女性店員(特に若くて好みのタイプ)がレジにいる場合は差し控える、わざわざ少し離れたコンビニにまで出向く、表紙を裏向きに向けてレジに出す、など)を乗り越えてまで、購入を試みるモチベーションが分からないのです。
ところが、最近、町内会の委員を担当して分かってきたことがあります。「わが国の、ITリテラシーは、私が想像するよりも、はるかに低いレベルに滞っている」ということです。
「PCやスマートフォン(スマホ)が使えない」「Webアクセスができない」「メールの文面が作成できない」というレベルではなく、そもそも、メールアドレスを知らない、持っていないという人が、委員の中に、無視できない人数いることが分かったのです ―― とりわけ多いのがリタイヤ後のシニア世代です。
調べているうちに、これを裏づける事実が山ほど分かってきました。「購買層の中心は高齢者」「販売されている半分が、人妻・熟女系エロ本」といった具合です。
日本国内に、メール、パソコン、スマホが使えない人は、一定数存在しており(江端のシミュレーションでは、日本の人口の36%と推測)、そこからも「エロ本は、もうしばらく生き残ることができる」という仮説は成立しそうです。
つまり、ITリテラシーが十分でない人にとって、コンビニで入手できるエロ本は、文字通りコンビニエンス(便利)なものなのです。
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