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書き換え可能総残量でSSDの寿命を定義、サンディスク社が提案メモリ/ストレージ技術

» 2008年07月29日 13時51分 公開
[Rick Merritt,EE Times]

 米SanDisk(サンディスク)社は、NAND型フラッシュ・メモリーを利用した外部記憶装置であるSSD(Solid State Drive)の寿命に関する指標「Longterm Data Endurance(LDE)」を2008年7月24日に発表した。同社はこの指標を業界のデファクト・スタンダード(事実上の標準)にしたい考えだ。

 SSD の市場は、今まさに拡大し始めたところである。ただし業界は、ハード・ディスク装置(HDD)に比べてフラッシュ・メモリーの書き換え可能回数が少ないことが、SSDの普及を妨げる要因になり得るとの見方で一致している。現在のところ業界には、外部記憶装置としてフラッシュ・メモリーの書き換え耐性を評価する標準的な指標が存在しない。米国の電子部品関連標準化団体「JEDEC」のサブコミッティである「JC-64.8」は、この課題の解決に向けて標準規格を策定すると、2008年7月21日に発表していた。

 HDDの最大手メーカーである米Seagate Technology社でサーバー・グループのマネジャーを務めるSteffen Hellmold氏によれば、JEDECでは「(SanDisk社のアプローチは)われわれの方向性に沿っていると説明されている」と述べる。ただし同氏は、詳細についてはまだ説明を受けていないという。

 Seagate社は、SSDを2009年初頭に市場投入すると発表しており、当初はサーバー機器に向けるとしている。同社はJEDECにおいて、SSDの書き換え耐性や信頼性、性能、データ保持期間などの指標に向けたテスト規格の標準化の取り組みを主導している。

 JEDEC のサブコミッティJC-64.8で共同議長を務め、Seagate社の標準化担当マネジャーであるAlvin Cox氏は、「業界にはこうした仕様が今すぐにでも必要であり、できるだけ早く標準的な指標を策定しなければならない。よりどころとなる標準テスト規格が存在しなければ、いくら正しい数字であっても、実際の機器にとって意味をなさない」と述べる。

 JEDECのサブコミッティは現在、SSDをコンピュータの外部記憶装置として利用するに当たって、どのような標準テスト規格を策定する必要があるかを見極めるため、さまざまな利用シナリオをレビューしているところだ。

 SSDの書き換え可能回数に制限があることは、パソコンの外部記憶装置として使う場合、それほど深刻な問題にはならないだろう。記録容量が比較的少ない外部記憶装置を使い、書き換え回数が比較的少なく、一般消費者向けの機器なので製品寿命が比較的短いからである。しかし、Seagate社が狙う市場であるサーバー機器に向けた記録容量が大きいSSDでは、書き換え回数が少ないという弱点は致命的になる。そのような分野では、データベースのトランザクションをキャッシュしたり、ウェブ・サーバーの検索処理を高速化したりする用途に使われるからだ。

 一般にNAND型フラッシュ・メモリーのベンダーは、SSDに使われるメモリー・チップ単体では、書き込み/消去回数に関する評価手法を確立している。ところがSSDでは、メーカーによって採用するコントローラICが異なっており、各コントローラICが独自の書き込み最適化アルゴリズムを備えている。そのためSSDについては、書き込み/消去回数をメモリー・チップ単体と同様に評価する手法が、まだ確立されていないのだ。

 「メモリー・チップ・レベルの書き換え耐性の指標を、SSDレベルの指標に変換するには、多少の作業が必要である」とHellmold氏は言う。

 「これは(JEDECのサブコミッティに)かかわりながら、われわれが定義するものについて発言権を持っていられる良いタイミングだ」とCox氏は述べる。このサブコミッティでは、新たに策定する標準テスト規格によって、「公平な立場で、さまざまなSSDの間の差異や、SSDとHDDとの違いを見極められる」(同氏)ようになることを目指す。

 一方、SanDisk社は、同社が提唱する指標であるLDEが、前述の課題に対する解決策の鍵を握ると主張する。LDEは、SSDの寿命を書き換え可能な総データ量として定義する。単位は「TBW(Tera-Byte Write)」である。同社でSSDのマーケティング担当シニア・ディレクタを務めるDon Barnetson氏は、「当社の顧客は、実使用状態での耐性を計測できる『ガソリンの残量計』のような指標を求めている」と述べる。

 LDE では、米国の非営利コンソーシアム「BAPCo(Business Applications Performance Corporation)」が定めるコンピューティング分野の性能指標を、部分的に利用する。同コンソーシアムでは、パソコンのビジネス・ユーザーの標準的な使用パターンによると、1週間当たりの書き換えデータ量は87Gバイトだと定義している。

 ただしSanDisk社は、LDEの具体的な測定方法を正確には明らかにしておらず、異なるコントローラICを採用した他社製SSDへの適用に関しても不透明だ。Barnetson氏によれば、SanDisk社はLDEによるSSDの書き換え耐性評価手法を実験室レベルで検証済みであり、その結果をパソコン・メーカーやOSベンダーと秘密保持契約の下に共有しているという。

 これまでのところ、SanDisk社のLDEを支持すると公式に表明した企業はない。しかし、「SSDの書き換え回数の残量計というコンセプトを説明すると、誰もが気に入っている」とBarnetson氏は言う。

 「当社は、これを業界の標準規格にしたい」と同氏は付け加える。「当社は、LDEの標準化に適切な標準化団体を見極めようとしている。それはJEDECかもしれない」(同氏)。

 市場調査会社である米Semico Research社でメモリー担当のアナリストを務めるBob Merritt氏は、LDEが重要な役割を担う可能性があると述べた。「SSDの特性を数値化する正しい方向に向かう偉大な一歩だ。すでに誰もが、SSD の書き換え耐性の指標が存在せず、早急に策定しなければならないという課題に気付いている。解決されなければ、今後数年のうちに大きな問題になってしまうだろう」(同氏)。

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