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「あえてレガシー半導体」のSkyWater Infineon工場買収で生産能力4倍に米国のサプライチェーン強化にも(1/2 ページ)

米国の半導体ファウンドリーSkyWater Technologyは、米国テキサス州オースティンにあるInfineon Technologiesの工場を買収し、生産能力を4倍に拡大した。レガシー半導体の生産に注力することで、「脱アジア」を進める米軍などのニーズに応える計画だ。

» 2025年08月14日 11時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 米国の半導体ファウンドリーSkyWater Technology(以下、SkyWater)のシニアバイスプレジデントであるRoss Miller氏は、米国EE Timesのインタビューに応じ「SkyWaterは、米国テキサス州オースティンにあるInfineon Technologies(以下、Infineon)の工場を買収したことで、生産能力を4倍に増強する。Infineonのような垂直統合型企業(IDM)がファブライト化/ファブレス化を進める中、さらなる生産能力の買収を進めていく予定だ」と述べている。

SkyWaterがInfineonから買収した米国テキサス州オースティンの工場 SkyWaterがInfineonから買収した米国テキサス州オースティンの工場[クリックで拡大] 出所:SkyWater

 SkyWaterは2025年6月30日(米国時間)に、Infineonの200mm工場の買収を完了した。ファウンドリー顧客向けに稼働を開始し、130nm〜65nmのレガシーノードの生産量を拡大していくという。Miller氏は「Infineonや米国国防総省(DoD)、D-Waveのような量子コンピューティングメーカーといった顧客が、この工場を使用する予定だ」としている。

 「これによって年間当たりのウエハー生産能力は、従来の約4倍となる約40万枚に達する見込みだ。今回の買収で、個々のデバイスをチップ上で接続するための金属配線を構築する銅の多層配線(BEOL)などの重要な処理能力を確保できる」(Miller氏)

 また同氏は「このようなミックスドシグナル技術は、まさに主力技術だ。SkyWaterは今回、Infineonとのライセンス契約によってそこにアクセスでき、膨大な価値を得ることになる」と述べている。

 一部では、レガシーチップは中国に主導権を奪われるリスクのある分野だとされている。しかしSkyWaterは、そこにチャンスを見いだしている。

 「こうした分野に対応する生産能力の大半が海外に移転している。マイコンや組み込み電子機器、パワーマネジメントIC、センサーなどの80〜90%が、主に中国や台湾をはじめとする海外で生産されているのだ。このために、米国では国防と産業の両分野が非常に厳しい状況に置かれている。今回の契約締結によって現在十分なサービスを受けていない分野にソリューションを提供できる」(Miller氏)

中国がシェアを高めるレガシー半導体 「米国産」が強みに

 技術調査会社TechInsightsのバイスチェアマンであるDan Hutcheson氏は「中国は、米国との間で現在も続く技術戦争の中で、エレクトロニクスサプライチェーンにとって重要不可欠なレアアースの供給を停止した時と同じように、レガシー半導体を武器に変えることができる」と指摘する。

 同氏はEE Timesのインタビューの中で「中国は、価格を下げることでレガシー分野におけるシェアを獲得している。つい最近も重要な材料の供給を制限したように、アクセスを制限するという報復能力を増強していくだろう」と語っている。

 「米国の自動車メーカーや産業制御メーカー、半導体設計メーカーなどの経営陣は、安全性の高い国内供給の必要性を認識している」(Miller氏)

 Hutcheson氏は「米国商務省が調査を行ったことで、これは深刻な懸念を抱くべき状況だと米国政府も認識している」と指摘する。

 米国におけるレガシー半導体の供給確保に対する関心は高まっているが、SkyWaterの売上高には反映されていない。Miller氏は「まだ収益にはつながっていない。現時点では、生産能力へのアクセスを求める動きと、技術の移転と生産能力の強化を進める必要性と意欲が見られるにとどまっている」と述べている。

 Infineonと国防総省からの需要によって、SkyWaterテキサス工場は生産能力をフル活用することになる見通しだ。

 Miller氏は「Infineonと10億米ドルを超える複数の供給契約を締結した。テキサス工場では今後4年間、Infineon向けのチップを製造することになっている。それ以降については契約上の義務は確定していないものの、これは長期的なパートナーシップだと捉えている」と述べている。

 SkyWaterは、自社の生産能力を削減しているInfineonなどのIDMから、追加の生産能力を獲得することを検討している。

 「ここ米国では、オンショアリングへの動きだけでなく、IDMによるファブライトまたはファブレス型モデルへの移行が進んでいる。この傾向は今後も続くと予想される。これは、オンショアリングと並んで、実際に生産能力拡大の複合的な要因となっている。当社はこうした動きを統合の機会と捉えて注視している」(Miller氏)

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