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全波長領域の太陽光を吸収できる太陽電池材料、無機と有機のハイブリッドで米大学らが開発エネルギー技術 太陽電池

» 2008年10月24日 16時20分 公開
[R. Colin Johnson,EE Times]

 一般に太陽電池には波長選択性があり、波長領域によって光の吸収特性が異なる。このため、特定の波長領域に合わせて材料を選択する必要があった。そこで米Ohio State Universityらの研究チームは、「無機/有機ハイブリッド」による波長選択性が低い新型材料を開発した。あらゆる波長領域の太陽光を吸収可能な太陽電池を実現できる可能性がある。

 この新型ポリマー材料は、太陽電池における電荷分離の効率を大幅に高められるという。光が当たることで遊離した(電荷分離した)電子が材料内部に自由電子として残留する時間が、現行の太陽電池に比べて飛躍的に長くなるためだ。

 同大学のMalcolm Chisholm教授によると、無機/有機ハイブリッドの新型ポリマー材料を使えば、「原理的には太陽光を全波長領域にわたって吸収するポリマー・ブレンドを実現できる。具体的には、波長がおよそ300n〜10μmまでの光を吸収可能だ」という。

 太陽電池では、入射光によって電子が励起され、材料中の原子の電子殻から電子が分離する。こうした電子を収集することで電力が得られるわけだ。ところが、分離した電子は、素早く収集しなければ元の原子に戻ってしまう。通常、太陽電池材料は蛍光発光性(励起一重項状態からの発光)か、またはりん光発光性(励起三重項状態からの発光)である。同大学が開発した新型のハイブリッド材料は、これら両方の性質を備えていることから、効率をさらに高められる可能性があるという。

 「開発した材料は、励起一重項と励起三重項の両状態において機能する。励起一重項状態において約10ps程度と比較的長く持続し、励起三重項状態ではさらに長く、最長100μsほども持続する。これは電子を電子殻から分離するのに十分な時間である」(同教授)。

 この新型材料は米Ohio Supercomputer Centerで設計され、台湾National Taiwan Universityで合成された。米National Science Foundation(NSF:米国科学財団)とOhio State University所属の研究機関であるInstitute for Materials Researchから資金提供を受けている。  新型材料に関する詳細な情報は、2008年10月7日発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載されている。

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