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60GHz帯ミリ波がついに宅内民生市場へ、パナソニックがWirelessHD対応テレビを発売無線通信技術 ミリ波

» 2009年02月04日 15時55分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 ミリ波は長い間電波の「ホープ」であり、「夢」であった――。1999年に発刊された学術書「新ミリ波技術」のまえがきの一文である。これまで、軍事や自動車、産業といった限られた分野にのみ使われてきたミリ波が、いよいよ宅内の民生機器で使われる。パナソニックが60GHz帯のミリ波を使う無線通信規格「WirelessHD」に対応した映像伝送用ワイヤレス・ユニットを2009年4月に製品化する。

 60GHz帯は、7GHzと広い周波数帯域を使えるという大きな特徴がある。この周波数帯域を活用すれば、1080pの高品位(HD)映像を非圧縮で伝送可能だ。ただしこれまでは、(1)部品コストが高い、(2)電磁波の直進性が強いという課題があった。部品コストが高ければ、民生機器には受け入れられない。直進性が強いと、宅内のリビング・ルームなど障害物が多い場所では使いにくい。

図 2009年2月に発表したチューナ外付け型薄型テレビのオプションに、ワイヤレス・ユニットを用意した。
図 ラックの最上段にあるのが送信側ワイヤレス・ユニットである。
図 受信側のワイヤレス・ユニットは、ティスプレイ部の左下に設置する。

 (1)については、60GHzに対応した半導体チップをCMOS技術で製造できることになったこと、(2)については電波の指向性を動的に調整するビーム・ステアリング技術を導入したことが課題解決につながった。「2009年3月のテスト・センター設立を待って、WirelessHD規格の認証プログラムの認定を受ける。認定を受けてロゴを付与された後、販売を開始する」(同社の説明員)という。WirelessHD規格の認証プログラムを受けるのは、同社が初になる予定だ。

 ビームステアリングとHD映像の安定伝送を両立

 同社が2008年2月3日に発表した、チューナ外付け型のプラズマ・テレビ「Zシリーズ」のオプションとして用意した。送信側機器と受信側機器で構成されており、送信側はチューナ機器に、受信側はプラズマ・テレビのディスプレイ部に接続する。これによって、チューナ機器とディスプレイ部を無線接続する仕組みである。データ伝送速度は最大4Gビット/秒程度、伝送距離は10m程度である。「最大4Gビット/秒が得られれば、1080pのHD映像を劣化なしに、非圧縮で送れる」(同説明員)。

 2008年10月に開催されたエレクトロニクス関連の展示会「CEATEC JAPAN 2008」で同社は、WirelessHD規格に向けた無線モジュールやこれを使ったデモを見せていた。このときには、「無線モジュールをチューナ機器に内蔵することも検討している」と説明していた。今回、チューナに外付けするタイプで製品化した理由について同社は、「プラズマ・テレビのディスプレイ部を24.7mm(最厚部)に薄くすることを最優先にしたためである。技術的には可能だが、無線モジュールをディスプレイ部に組み込むことを避けた」(同説明員)と説明した。

 製品化するまでに最も苦労した点は、「HD映像の品質と、ビーム・ステアリング技術の両立だった」(同説明員)という。前述のようにWirelessHD規格では、送信側機器と受信側機器の間に障害物があった場合でも、これを避けるように電波の指向性を動的に切り替えている。指向性を切り替えたときにも、高い画質を安定的に維持してディスプレイに表示させるのが技術課題だったとする。「WirelessHD規格向け無線チップを開発したSiBEAM社と当社(パナソニック)で協業することで解決を図った」(同説明員)。

 Zシリーズの想定価格は、54インチ型が70万円前後、50インチ型が60万前後、46インチ型が55万円前後である。これに対して、ワイヤレス・ユニットの想定価格は、送信側と受信側合わせて6万円である。

図 チューナーやBlu-Ray Discプレーヤなどが手元で扱えることや、テレビ・ディスプレイの設置自由度が高まることを訴求していた。

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