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「USBの絶縁を1チップで実現」、アナログ・デバイセズ社がアイソレータIC拡充アナログ設計

» 2009年05月21日 16時33分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 米Analog Devices(アナログ・デバイセズ)社は、電気的に絶縁された回路間でデジタル信号をやりとりする用途に向けたアイソレータIC群「iCoupler」を拡充し、USBインターフェースの物理層回路を集積した「ADuM4160」を発売した。高電圧を扱う医療機器や産業機器において、内部回路とUSBの外部ポートの絶縁を1チップで実現できる。従来これらの機器では、USBコントローラICに多チャネルのフォトカプラを組み合わせて絶縁を確保する手法が一般的だったという。今回のアイソレータICを使えば、「絶縁部の構成を簡素化でき、部品の点数やコストを削減可能だ」(日本法人であるアナログ・デバイセズ)と主張する。

 従来のiCouplerと同様に、Si(シリコン)チップの表面に絶縁体を挟んで対向するように積層した微小コイルを使って絶縁を確保する、磁気結合方式のアイソレータICである。機器のホスト・マイコンに接続する側(仮に1次側とする)と、外部ポート経由で外付け機器に接続する側(仮に2次側とする)の間で、USBのデータ信号の差動ペア1対(Data+/Data−)を電気的に絶縁する。USB 2.0規格のフルスピード仕様(12Mビット/秒)とロースピード仕様(1.5Mビット/秒)に対応した。絶縁耐性は5kVrms値(1分間)を確保しており、絶縁素子に関する海外の安全規格であるUL 1577規格やVDE 0884-10のほか、医療機器の安全規格であるIEC 60601-1それぞれの認定を申請中だという。

 電源電圧は3.3Vで、1次側と2次側それぞれに供給する必要がある。3.3V出力の電圧レギュレータ回路を内蔵しているため、USBバス・パワーの5Vを電源電圧として利用することも可能だ。ただし、iCouplerの一部品種(参考記事)とは異なり、絶縁用コイルを利用したDC-DCコンバータを搭載しているわけではない。すなわち、このアイソレータICを搭載する機器と外部機器との間で、USBを介して一方から他方へ電力を供給するといった使い方はできない。これについてアナログ・デバイセズは、「今回のアイソレータICは、電源を備える機器への組み込みを想定している。また、現行のiCoupler技術では、微小コイル間でやりとりできる電力が最大0.5Wなので、USBバス・パワーの2.5Wには対応できない」と説明している。

 消費電流は、データ伝送速度が1.5Mビット/秒のときに最大7mA、12Mビット/秒のときに最大8mA、データ信号のやりとりが無いアイドル時は2.5mAである(いずれも電源電圧が4.0〜5.5Vのとき)。パッケージは16端子SOICを採用した。すでにサンプル出荷を始めており、2009年6月に量産出荷を始める予定だ。1000個購入時の米国における単価は4.89米ドル。評価ボードも用意した。

図 USBアイソレータICの評価ボードである。基板中央の下側にUSBアイソレータIC「ADuM4160」を配置したほか、上側には500mW出力の絶縁型DC-DCコンバータを内蔵するアイソレータIC「ADuM5000」も搭載した。
図 USBインターフェースの物理層回路を集積したアイソレータIC「ADuM4160」を使えば、USBポートの絶縁を簡単に実現でき、標準的なUSBケーブルで機器同士を絶縁を確保しながらつなげる。USBコントローラICと多チャネルのフォトカプラを組み合わせた絶縁回路を搭載したり、そうした絶縁回路を内蔵した特殊なUSBケーブルを使う必要はない。出典:アナログ・デバイセズ
図 USBアイソレータICの機能ブロック図である。5個の微小コイルを集積しており、それらを使ってUSBのデータ信号(Data+/Data−)のほか、1次側と2次側の送受信切り替え信号を絶縁伝送する仕組みだ。出典:アナログ・デバイセズ

問い合わせ先:アナログ・デバイセズ インダストリー&インフラストラクチャ・セグメント、電話03-5402-8128

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