2009年8月11日〜13日に米カリフォルニア州サンタクララで開催された「Flash Memory Summit 2009」の基調講演で、米SanDisk社の創設者で会長兼CEOのEli Harari氏がNAND型フラッシュ・メモリー業界に関する大胆な予測を披露した。
同氏によると、今後必要となるNAND型フラッシュ・メモリーの生産能力と需要のバランスにずれがあるため、現在NAND型フラッシュ・メモリー業界が分岐点に立っていると警告した。以下が、Harari氏の予測である。
1つ目に、業界に回復の兆しはあるとした。低迷していたNAND型フラッシュ・メモリー市場は、現在徐々に回復へ向かっている。需要と供給のバランスは以前よりも良い状況にある。
2つ目の予測は、平均販売価格(ASP: Average Selling Price)は以前ほど下落しないというものだ。2010年〜2013年のNAND型フラッシュ・メモリーの価格下落率は、年率で約40%と予測した。近年の動向を見ると、2005年〜2009年の年間の価格下落率は約60%だった。
3つ目に、マルチビット型が優勢になるとした。2009年〜2015年の間に、3ビット/セル(x3)と4ビット/セル(x4)のNAND型フラッシュ・メモリーが同市場の大半を占めるようになるという。現時点では2ビット/セルが主流である。
4つ目の予測は、マネージドNAND型への転換だ。NAND型フラッシュ・メモリーの要となるのは、コントローラである。SSD(Solid State Drive)など、フラッシュ・メモリーを利用したさまざまな機器の動作を制御するものだ。現在、NAND型フラッシュ・メモリー市場は、既存のNAND型からマネージドNAND型への転換時期にある。
5つ目の予測として、ユニバーサル・メモリーの実現は疑わしいとした。NAND型を凌ぎ、その代替となり得るユニバーサル・メモリーはいまだ実現していない。つまり、いわゆる「フラッシュ・リプレイスメント(フラッシュ・メモリーの代替となり得るメモリー)」と呼ばれる、強誘電体メモリー(FeRAM:Ferro Electric Random Access Memory)や磁気抵抗メモリー(MRAM:Magnetic Random Access Memory)、相変化メモリーなどが、今後NAND型フラッシュ・メモリーの代替になり得るかどうかはいまだ不透明だ。
6つ目は、3次元構造メモリーの実現可能性についての予測だ。現在SanDisk社は東芝と提携し、3次元構造のNAND型フラッシュ・メモリーを開発中だ。しかし「材料面でのブレイクスルーが必要で、3次元構造への移行にはまだ数年かかる。」としている。
7つ目に450mmウエハーへの転換は宙に浮いた状態が続くと予測した。設備投資に極めて多額な資金が必要となるため、NAND型フラッシュ・メモリー・メーカーは300mmウエハーから450mmウエハーへの転換に積極的に取り組めない状況にある。
8つ目に、極端紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)リソグラフィは今後隆盛するかどうかの分岐点にあると述べた。現在、最先端のNAND型フラッシュ・メモリーの製造工程には193nm液浸リソグラフィが採用されている。193nm液浸リソグラフィから極端紫外線リソグラフィへの転換は、NAND型フラッシュ・メモリー・メーカーにとって容易に取り組めることではない。
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