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電球型蛍光灯とLED照明、省エネ対決は一長一短LED/発光デバイス

電球型蛍光灯、LED電球ともに白熱電球と比べて発光効率が高く、大幅な省エネが可能だ。LED電球は放熱技術を向上することでさらに低価格化が可能なように思われる。課題は光の色味だ。

» 2009年02月23日 11時00分 公開
[David Carey,Portelligent]

 化石燃料の代替エネルギに注目が集まっている昨今、さまざまな機器の消費電力を可能な限り抑える「省エネ」について再び見直す必要があるだろう。代替エネルギを増やすことに加えて、消費電力の削減がエネルギ問題の解決の鍵を握っているのである。

 自動車業界では、環境保護に対する意識の高まりを背景に、ハイブリッド車が関心を集めている。確かに、消費エネルギ全体に占める自動車の割合は大きいため、関心を集めるのは当然と言える。しかし、宅内用や商業用の照明器具の消費電力量も非常に大きいことをご存じだろうか。数値は調査機関によって若干異なるものの、消費エネルギ全体の15〜35%を占めている。白熱電球は、長年にわたって照明器具の主力製品として広く使用されてきた。しかし、発光効率が著しく低いことから、代替光源への切り替えが求められている。白熱電球の発光効率は一般に、5%をはるかに下回るとされる。

 省エネに対する市場要求が高まっている中、照明に関して今後需要の増大が期待される技術が2つある。1つは、「電球型蛍光灯(CFL:Compact Fluorescent Lamp)」。もう1つは、「LED(Light Emitting Diode)照明」である。どちらも消費電力の削減に一役買っており、すでに環境保護を推進する目的などで採用され始めている。それでは、電球型蛍光灯とLED照明の構造を比較してみよう。

蛍光灯の新たな使い道

 2つの技術のうち電球型蛍光灯に関しては、価格が徐々に下がり始めており、「値ごろ感」が高まっているという。エレクトロニクス業界のエンジニアに向けたウェブサイト「Planet Analog」の編集長であるBill Schweber氏が最近、大量の電球型蛍光灯を筆者に送ってきた。同氏によれば、現在の市場単価は5米ドル以下だという。価格の観点からは、白熱電球の代替光源として問題ないだろう。分解して調査するのにも、惜しくない価格だ。

 蛍光灯の特徴は、白熱電球に比べて発光効率がはるかに高いことだ。すなわち、投入電力当たりの光出力が大きく、熱放射量が少ない。現在、オフィスをはじめとした商業施設のみならず、宅内の照明器具にも広く使われている。しかし1980年代までは、小型の照明器具にはふさわしくないと考えられていた。ランプ形状が直管や環状のみだったからだ。1980年以降、小型化が進んで、既存の白熱電球用ソケットに取り付けられる電球型蛍光灯が登場した。しかも今では、非常に安価に入手できるようになったため、白熱電球から電球型蛍光灯への買い換えが加速している。

 筆者が分解したのは、MaxLiteの20W型電球型蛍光灯である(図1)。この蛍光灯の明るさは、75Wの白熱電球に匹敵すると説明されている。従来の蛍光灯と同様に、電球型蛍光灯でもガラス管を使っている。ガラス管の内部で、イオン化したガスから紫外線が放射されて、それが管面に塗布してある蛍光体に衝突することで発光する仕組みである。ガラス管を使いつつも、電球型蛍光灯を小型化できた要因は2つある。1つは、ガラス管を細くしたこと。もう1つは、ガラス管を折り畳んだり、らせん状にしたりして形状を大きく変えたことだ。

ALT 図1 電球型蛍光灯とLED照明器具の構造を比較した 左上が電球型蛍光灯で、右上がLED照明器具である。右下には、LED照明器具のプリント基板を示した。120Vの交流電圧を入力可能なAC-DC変換回路を構成している。左下は、LEDを実装した基板とLEDを点灯させた様子を示した。「暖かみ」を生み出すために赤色LEDを使っている。(A)Fairchild Semiconductorの500V耐圧のnチャネルFET、(B)Fairchild Semiconductorの1.5A対応の整流器、(C)カスタムIC、スイッチングコンバータ/制御ICかと思われる

 従来の直管型蛍光灯を駆動させる安定化(バラスト)回路は、そのままでは電球型蛍光灯の標準的な外形寸法に組み込むのは難しい。この問題を解決するため同社や競合他社は、小型部品を採用して比較的狭い空間に実装可能な駆動回路を開発した。

 MaxLite社の電球型蛍光灯の駆動回路は、2個の半導体チップと4個のダイオード、複数のコンデンサやインダクタで構成されている。これらの電子部品で共振型インバータ回路を構成し、蛍光灯に印加する高周波高電圧を生成する。筆者は電源技術の専門家ではないため、電源回路の構成について詳細な知識を持っていない。しかし、内蔵のバラスト回路がごくわずかな電子部品で構成されている点を考慮すると、販売価格をもっと低くできるように思えた。

 蛍光灯業界では、それぞれのメーカーが独自の製造技術を培ってきた歴史がある。今や、白熱電球に匹敵するほど安価な電球型蛍光灯が市場に多く出回っている。電球型蛍光灯は、発光効率と製品寿命の両方の点で「地球に優しい」だけでなく、導入コストとランニング・コストを合わせた総コストも低い。このため、非常に魅力的な照明器具だと認識され始めてきている。電球型蛍光灯の課題を挙げるとすれば、蛍光体材料の消耗が激しいことだろう。ただし、品質の高い製品であれば、寿命は数カ月〜数年に達する。

決戦の幕が上がる

 一方のLED照明もまた注目に値する。Schweber氏から送られてきたサンプルを目にした瞬間、今回の製品対決の対戦者であるLED照明に対する興味は一気に高まった。天井に埋め込むダウンライト用光源として、最近市場に登場した高輝度LEDに目を奪われてしまったのである。LED照明は、白熱電球の代替候補として堅実に市場シェアを高めているようだ。

 LED照明は、新たな進化を遂げている。LEDといえば、かつては赤色やだいだい色、黄色、緑色、青色などが主流だった。こうしたLEDのほかに、照明器具に使いやすい高輝度白色LEDが登場した。

 白色LEDの多くは、黄色の蛍光材料を塗布した青色LEDである。蛍光体材料が放射する黄色光と、内部の青色LEDが放射する光を混色して白色を得る仕組みだ。蛍光材料を使うという点では、蛍光灯と似ている。白色LEDは、小型の液晶ディスプレイに使うバックライトに欠かせない。さらに、白色の高輝度LEDは、大型の液晶ディスプレイ用バックライトや一般照明器具を対象に市場を開拓し始めている。

 今回、CreeのLED照明器具「LR6」を分解することにした。Cree社は、SiC(炭化ケイ素)材料を使用した青色LEDを活発に開発している。同社は2008年2月に、LED Lighting Fixtures(LLF)を買収した。これまで以上に、照明器具に向けた高輝度LEDに関する取り組みを進めていくのが狙いだ。

 分解したLED照明器具は、ダウンライト用である。照明設備の専門店で、100米ドル(税別)で購入した。あまりに高価なこと驚いたかもしれない。高輝度LEDは生産数量が少ないために、その希少性が市場価格に反映されてしまう。技術開発に要した投資コストの高さと、高輝度LEDの製造コストの高さという2つの要因も重なるため、広く普及する価格帯にまで下がっていない。現在のところ、価格を引き下げるほど量産は進んでいないようだ。

 光出力(光束)は65W白熱電球と同等で、消費電力は12W以下だ。発光効率は、白熱電球に比べて80%高く、電球型蛍光灯と比較しても50%高い。驚いたことに、このLED照明の筐体(ハウジング)部分は、アルミニウムの鋳造で頑丈に製造されている。筐体の構造も興味深いフィン構造である。こうした構造を採用したために、製造コストが大幅に増加したようだ。消費電力がわずか12Wに抑えられているという魅力を考慮しても、この設計はやり過ぎのように思える。この設計のメリットを何か見逃しているのだろうか。

 我々になじみが深い電子部品を詳しく見てみよう。筐体には2つのプリント基板が収められている。それぞれ、電力変換とLED実装の役割を担っている。LED照明に使う電力変換回路は大抵、120Vの交流電圧を入力可能なAC-DC変換回路として動作する。一方のLEDを実装するプリント基板には、6個の白色LEDを直列に接続した列(ストリング)が2つ並んでいる。合計12個の白色LEDを使ったことになる。このほか、カスタムIC「LEA 001」がある。スイッチング電源制御ICのようだが、このICの本当の機能ははっきり分からない。しかし、次に説明するLR6の付加機能は、このカスタムICで実現しているようだ。

 図1を見ると、白色LEDの列の間に複数の赤色LEDが実装されていることが分かる。これらの赤色LEDは、照明光に「暖かみ」を加えるためのものだ。照明光の色温度を最適な値に調整し、白熱電球に少しでも近づけることが目的である。赤色LEDの輝度は、LEDを実装したプリント基板の片隅にあるフォトダイオードに入射する光の強度に応じて決まる。フォトダイオードを活用することで、白色LEDの出力に合わせて赤色LEDの光出力を調整する仕組みである。白色LEDの光出力は、製造段階で調整する。

未来が「明るい」とは限らず

 筆者は、電球型蛍光灯やLED照明といった、高い発光効率を訴求する照明が万能であるとは思わない。例えば、LED照明が照明の主役に就くには価格が高過ぎる。しかも、白熱電球特有の発光スペクトルや色温度を、電球型蛍光灯やLED照明で実現できるかという課題に関しては、いまだに解決策がはっきりしていない。

 前述のように、これらの代替照明はいずれも発光効率という点では白熱電球をはるかに上回る。しかし、電球型蛍光灯やLED照明の光を見ても、白熱電球が醸し出す暖かみが感じられない。むしろ、寒気を感じるほどだ。確かに地球には優しい。これらの代替照明は広く普及していくのかもしれない。しかし今夜、就寝前の読書やクロスワードを楽しむときに、筆者がスイッチを入れるのは、やはり白熱電球なのだ。



David Carey氏は、電子機器の解体/分解レポートを提供する市場調査会社のPortelligentでプレジデントを務めている。同社のWebサイト

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