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電池メーカー各社がノート・パソコン向けの新しいリチウムイオン2次電池を開発エネルギー技術 二次電池

» 2009年10月26日 16時29分 公開
[Rick Merritt,EE Times]

 電池メーカー各社は、ノート・パソコンに向けたリチウムイオン2次電池の開発に取り組んでいる。従来使われてきたLiCoO2(コバルト酸リチウム)に代わる新しい材料を採用して、電池のエネルギ密度を高める考えだ。しかし、ノート・パソコンの電池寿命を延ばすには、ノート・パソコンにもシステム・レベルの変更を加える必要がある。

 電池メーカーは過去数年間、リチウムイオン2次電池の性能向上に苦慮してきた。米Intel社でバッテリ・プログラム・マネジャーを務めるAndy Keates氏によれば、ノート・パソコンに用いるリチウムイオン2次電池の容量は過去、毎年約7%の割合で伸び続けてきたが、2005年以降は3%にまで落ち込んでいるという。

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 韓国Samsung Electronics社とパナソニックの電池部門はそれぞれ、リチウムイオン2次電池の容量の伸び率を2ケタに上げるための取り組みを続けてきた。しかし、「ノート・パソコンの電池寿命を延ばすには、ノート・パソコンの充放電電圧をパソコン・メーカー側が変更する必要がある」(Keates氏)という。

 Keates氏は、「従来のLiCoO2に代わる別の材料を使うことで、リチウムイオン2次電池のエネルギ密度は向上している。しかし、電池使用時に実際に容量を高めるにはこれまで通りに電池を使うだけではだめだ。パソコン本体の充放電電圧を変更し、容量やサイクル寿命、電池寿命などのパラメータを新たに追加しなければならない」と説明する。だが、「ノート・パソコン・メーカーが一斉にこうした変更を加えられるわけではない」(同氏)。

 充電レベルを4.35V以上に高めた電池を開発した電池メーカーは、ノート・パソコンで使用する場合は、電圧を2.5〜2Vに抑えることを推奨している。しかしそのためには、ノート・パソコンに新しい電圧レギューレータを追加し、新たな電池管理手法を導入する必要がある。

 2009年9月22日から24日まで米国サンフランシスコで開催された「Intel Developer Forum(IDF)Fall 2009」でのプレゼンテーションの中で同氏は「電池メーカーは、ノート・パソコンで電池を利用する際の電圧をできる限り2.5〜2Vに抑えるよう要請している。しかし、ノート・パソコン側ですぐさま実現できるわけではないだろう」と語った。

 韓国Samsung SDI社の米国支社は現在、容量3Ahのリチウムイオン2次電池を製造している。同電池は正極をAl(アルミニウム)とそのほかの物質でドープし、電解反応を早めるために負極にコーティングを施している。しかし、この電池の充電サイクルはわずか300回である。サイクル寿命を1000回に高めるには、最大容量を2.8Ahに抑えなければならない。

 Samsung SDI社は2010年の秋に、負極にAg(銀)を使用してエネルギ密度を30%高めた電池を投入したい考えだ。この電池は4.35Vで充電し、2.5Vで放電するという。

 同社のバッテリ・グループでマーケティング・ディレクタを務めるSean Lee氏は、「当社の顧客の33%が、電池寿命を1時間延ばすために45米ドルを投じてもよいと考えていることが分かった」と述べている。

 パナソニック エナジー社は2006年、Ni(ニッケル)を使用した容量2.9Ahの電池を発売した。同社の技術者である米田淳夫氏によれば、同社は現在、NiとAlを混合して用いる容量3.6Ahの電池の開発に取り組んでいるという。同社は、薄くて軽いノート・パソコン向けに、エネルギ密度の高い電池を開発し、現在の電池と同じ容量を備えながらもより小さい電池を供給したい考えだ。

 「新しい材料を用いた開発はまだ始まったばかりであり、どの程度性能が向上するのか、予測するのは難しい。一つ言えることは、ノート・パソコンにとって最良の電池は、今後もリチウムイオン2次電池であり続けるということだ」(Keates氏)。

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