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太陽電池市場、2010年には需給バランスが回復かエネルギー技術 太陽電池

» 2009年12月07日 16時48分 公開
[Mark LaPedus,EE Times]

 太陽電池市場はついこの間まで、初めての低迷状態にあった。しかし、この最悪の状況は間もなく終焉を迎えそうだ。

 米Needham & Company社のアナリストであるEdwin Mok氏は「太陽電池業界全体にわたって在庫の増大や供給過剰などを心配する弱気な見方が広がっている。しかし、当社の調査では、太陽電池市場の販売経路上にある在庫レベルが適切な状態に戻っていることが明らかになった。アジアの多数の企業は、強い需要に応えるべく、工場の稼働率を最大レベルに引き上げている。稼働率が向上する一方で、販売経路の在庫数が減少していることから、短期的には供給と需要のバランスが戻るだろう」と同社の報告書の中で述べた。

 太陽電池市場は、不況の影響を大きく受け、信頼を失っていたが、現在では前向きな兆候がいくつかみられる。世界の太陽電池市場は、2009年初頭に深刻な低迷状態に陥った。米iSuppli社によれば、太陽電池の普及が急速に進みすぎたスペインでFIT(Feed-In Tarif)による買い取り量の総量規制(500MW/年)がかかったためだ。スペインなどの需要を見込んで生産規模が急拡大した中、需要が追いつかず、これが引き金となって大量の在庫が発生した。その結果、価格の下落が起こったのだという。

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 太陽電池パネル市場では過剰生産によって価格圧力が発生し、太陽電池パネルの価格も引き下げ圧力にさらされることになった。太陽電池セルのメーカーであるドイツQ-Cells社や同モジュール・メーカーであるドイツConergy社の四半期の業績が赤字になったのも無理はない。

 ドイツの需要拡大に助けられる

 iSuppli社によれば、ドイツ国内で非常に強い需要が見られることから、これまで太陽電池業界を苦しめてきた過剰な在庫がいくぶん減り始めているという。同社で太陽電池分野のシニア・ディレクタを務めるHenning Wicht氏は報告書の中で、「ドイツでは、太陽電池の価格の急落を受け、2009年7月には太陽電池パネルの導入件数が過去最大レベルまで急激に増加した。世界の太陽電池パネル業界は、こうした需要の後押しを受け、2009年前半に苦しめられてきた深刻な供給過剰を解消できるようになってきた」と述べている。

 同氏によれば、2009年初めの供給過剰だった状態を基準とすると、2010年も引き続き太陽電池パネルの供給過剰は続くとみられる。しかしドイツでは、価格の下落に直面したことで需要の弾力性が強くなっているため、業界の対応の仕方によっては、2010年に供給過剰が解消される可能性もあるという。

 一方、さらに楽観的な見解もある。Needham & Company社のMok氏は、「当社の太陽電池サプライ・チェーン・モデルは、2009年第3四半期での流通在庫量が、2008年の同在庫量とほぼ同じ水準であることを示している。業界関係者は、下流の在庫が増加しても、短期的な価格引き下げ圧力についてそれほど心配していないようだ」と述べている。

 Needham & Company社は、太陽電池メーカー32社の在庫データを分析した結果、2009年第1四半期の平均在庫日数が89日であったのに対して、同年第3四半期には53日まで減少したことを明らかにした。

 Mok氏によれば「在庫状況は強い需要に支えられることで短期的には安定する。このため、2010年前半は価格の下落が抑制される。しかし在庫が残ったままだと、中長期的なリスクにさらされる。FITの助成額がさらに引き下げられる可能性があるからだ」という。

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