米国、欧州、中国などがスマートグリッドの標準化に向けた取り組みを進めている。経済産業省の取り組みは、スマートグリッドにおける競争領域と協調領域を見極め、日本が強みを持つ領域を生かしつつ、市場を創設、拡大する狙いがある。
経済産業省は、次世代電力網であるスマートグリッドの国際標準化を目指し、日本企業が優位にある「26の重要アイテム」を選定した。2009年8月に発足した「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会」がとりまとめた成果である。国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)などに提案し、3年以内に国際規格としての成立をもくろむ。
スマートグリッドの標準化については米国、欧州、中国などが標準化に向けた取り組みを進めている。例えば、米国は2010年1月にスマートグリッドに関する標準化ロードマップである「NISTスマートグリッドの相互運用性に関する規格のフレームワーク及びロードマップ案(第1版)」を公開した(PDF版)。第1版では、早急に策定する必要のある25の規格と、今後検討が必要な50の規格を特定している。
スマートグリッドの概念は、国や地域ごとに異なっている。経済産業省は「最新のIT技術を活用して電力供給、需要に係る課題に対応する次世代電力系統」と定義している(図1)。今回、スマートグリッドの実現に必要な技術を7つの事業分野に分け、日本企業が強みを持つ標準化が必要な26種類の重要技術を選びだした。
7つの事業分野とは、1)送電系統広域監視制御(WASA:Wide-Area Situational Awareness)、2)系統用蓄電池、3)配電網の管理、4)デマンドレスポンス、5)需要側蓄電池、6)電気自動車、7)AMI(Advanced Metering Infrastructure)システムである。
1)では東京電力や関西電力などの複数の一般電気事業者にまたがった電力供給量などの監視制御をもくろむ。2)では変電所や需要家に近い配電用変電所、複数のビルや産業システムにまたがったグリッドのそれぞれに大容量二次電池を接続し、より効率的な配電を試みる。3)では産業用太陽電池や一般家庭の太陽電池、電気自動車など、従来はそれぞれ独立して系統(商用電力網)と接続していた機器同士を連動させることを狙う。
4)は、需要側の消費電力、家庭用太陽電池や二次電池などの分散電源の能力を常に細かく把握することで、CO2排出量の多い火力発電所からの電力供給を抑える仕組みである。5)は家庭や中規模グリッド、産業部門内部で余剰電力を二次電池に蓄えることで、系統にかかる負荷を減らす試みである。6)は高い負荷がかかる電気自動車向けの急速充電器を既存の配電設備に組み込む仕組みである。7)では従来の電力計に替わる課金システムを作り上げる。
これらの事業分野に必要な技術が今回選定した26の重要技術である。図2に26の重要技術の位置付けを示した。
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