パナソニックは2010年2月9日、3D映像を再生できるテレビ受像機「3D VIERA VT2シリーズ」2機種の出荷を、2010年4月23日に開始すると発表した(図1)。フルHD対応の3Dテレビとしては世界初の製品だという。3D VIERA VT2シリーズに合わせて、「ブルーレイ3Dディスク」を再生できるBlu-ray Discレコーダ3機種も出荷開始する。
パナソニック デジタルAVCマーケティング本部本部長の西口史郎氏は「3D対応の映画『アバター』の世界興業収入が『タイタニック』を抜いて歴代1位になるなど、3D対応テレビが普及する条件が整った」と3Dテレビに対する期待を語った(図2)。さらに、白黒テレビ、カラー・テレビ、大画面テレビ、薄型・デジタルテレビに次ぐ第5のテレビが3Dテレビであるとした。
3Dテレビには製品化を阻む大きな課題が2つあった。多くのテレビ・メーカーは3D表示方式として「フレーム・シーケンシャル」方式を有望視している。左目に映す映像と右目に映す映像を1フレームずつ交互に表示する方式だ。
この方式には、映像の輝度が半減するように見えるというテレビにとっては致命的な問題がある。これは、左目と右目に交互に映像を見せているためである。3D映像を見るには、専用の眼鏡を使う(図3)。テレビが左目向け映像と右目向け向け映像を切り替えるのに合わせて、眼鏡は視聴者の視野を遮る。テレビが左目向け映像を映しているとき、眼鏡は右目の視野を遮り、右目の映像を映しているときは左目の視野を遮る。両目で同時に映像を見ることがないので、輝度が半減しているように見えるのだ。
そして残像の問題もある。例えば左目に向けた映像を映した後、右目向けの映像に切り替えると、左目向け映像の残像がわずかに現れる。その結果、映像にぼやけやちらつきが現れる。
パナソニックはPDPを改良することで、この2つの問題を解決したという。見た目の輝度が半減する問題は、PDPの発光効率を高めることで解決した。2007年比で約4倍、2009年比で約2倍に輝度を高めた。
具体的には3段階の改良によって、輝度を高めている(図4)。まず放電により発生する紫外線を増やし、放電効率を高めた。画素内に封止したXe(キセノン)ガスの分圧を従来よりも高めることでXe+とe−の量を増やした。次に、紫外線を受けて可視光線を放出する蛍光体の材料を工夫し、粒径を小さくすることで変換効率を高めた。最後に画素表面の電極の配置などを工夫することで開口率を高めた。
残像の問題には、2つの手法で対応した。まず、蛍光体の残光時間を従来の約1/3に短縮した。この結果、右目向け映像と左目向け映像の間にまたがる残像をなくせたという。残光がフレーム間をまたがらないように工夫した。さらに駆動方式も工夫した。PDPはアドレス/表示サブフィールド駆動方式を用いて、階調表示を実現している。今回、最も長いサブフィールドを1フィールド中の先頭に配置することで、残光の影響を最小化した。
予備放電をゼロに
このほか、PDPとして初めて、予備放電をゼロにすることで黒色の表示品質を高めた。PDPは蛍光体を塗布した箱形の画素内でプラズマ放電を起こすことで発光する。これまでは必要に応じて瞬時に放電して画像を表示するために、非表示画素であっても一定時間ごとに予備放電が欠かせないとされていた。しかし、黒を表現している画素で予備放電すると、わずかな光が発生する。このため、PDPでは真の黒表示は不可能とされてきた。同社は、予備放電の発光強度を低減するなどさまざまな試みを続けていたが、今回、これをゼロにすることに成功した。
PDPパネル技術グループ第1パネル開発チームで主幹技師を務める柳田一晃氏によると「封入したXe(キセノン)ガスの第1イオン化エネルギと近い仕事関数をもつ材料を画素上面に用いたほか、放電電圧を高めず、電界強度を高めることで、表示用の放電が予備放電なしで実行できるようにした」という。
これにより、全画面中の4%が白色、96%が黒色表示のとき、コントラスト比500万対1を実現できたという。
このほか、テレビの画面に外光が入射してもコントラスト比を維持できるようにブラック・フィルタをガラス基板の表面に配置した。
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