2010年、あるいはそれ以降も、メモリーが供給不足に陥るだろう。その要因としては、以下の3点が挙げられる。1つ目は、メモリーの需要が回復したこと。2つ目は2008年〜2009年の間、メモリー・メーカー各社は設備投資に十分な資金を投入していないこと。3つ目はオランダASML Holding社のリソグラフィ装置の開発に時間がかかるということだ。
英国の投資銀行Barclays Capital社でアナリストを務めるTim Luke氏は、最近発表した分析レポートの中で、「メモリー市場の『食物連鎖』を広範囲にわたり調査した結果、メモリーの供給量不足が2010年から2011年の終わりころまで続くと予測している」と述べている。
この分析レポートによると、2010年のNAND型フラッシュ・メモリーの売上高は2009年比70%増となる見込みだ。2009年、NAND型フラッシュ・メモリーの売上高は2008年比41%増だった。また、同レポートは、2010年のDRAMの売上高は2009年比で52%増にまで達するとしている。
Luke氏は、「2008年と2009年に、メモリー・メーカー各社は設備投資を大幅に削減した。2008年の設備投資額は2007年比で40%減少しており、2009年は60%も減少していた。一方で、その動きに合わせるように、DRAMとNAND型フラッシュ・メモリーの需要が着実に伸びた」と述べた。
2010年、メモリー・メーカー各社は前年比105%増となる174億米ドルの設備投資に踏み切ると見込まれるものの、いまだいくつかの課題は残る。Luke氏は、「メモリーの需要が改善してきた一方で、製造技術の微細化に不可欠な最新の液浸リソグラフィ装置の確保が難しくなっていることは、大きな問題だ。市場調査会社の中には、2010年第3四半期末になっても、ASML社製のリソグラフィ装置の供給量は増加せず、メモリー供給量の不足状態は、2010年第4四半期まで続くという見方もある。」と述べた。
ASMLとニコンは、それぞれリソグラフィ装置の主要なメーカーである。ASMLはメモリー・メーカーやファウンドリに大量に装置を販売しており、2008年10月には新たな液浸リソグラフィ装置の「TWINSCAN NXT」を発表した。一方のニコンは、米Intel社にリソグラフィ装置を多く供給している。
Luke氏は、「ASML社はリソグラフィ装置の製造にかかる時間を短縮したため、現在ではTWINSCAN NXTは9カ月で納入できる。とはいえ、9カ月は長い。製造に時間がかかるため、液浸リソグラフィ装置の出荷台数はなかなか増えない。2010年第1四半期は14台、第2四半期に20台程度だろう。リソグラフィ装置の製造技術が成熟してくると、出荷台数は増え、2010年第3四半期は23台、第4四半期は29台の液浸リソグラフィ装置を出荷できると予想している」と述べた。
Barclays Capital社のアナリストであるC.J. Muse氏は、Luke氏とは別の分析レポートで「韓国のSamsung Electronics社が、半導体市場が回復する中で、設備投資を拡大する可能性がある」と予想している。そして、「同社は、大量のASML社の液浸リソグラフィ装置を導入している。同社はASML社の装置を独占している」と述べている。
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