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IMECが太陽電池の効率向上に向け、金属ナノ構造体研究プロジェクトを発足エネルギー技術 太陽電池

» 2010年03月31日 16時54分 公開
[Peter Clarke,EE Times]

 ベルギーの研究機関であるIMEC(Interuniversity Microelectronics Center)は、金属のナノ構造体を利用して太陽電池セルの変換効率向上とコスト削減を目指す、共同研究プロジェクト「PRIMA」を発足させた。

 このプロジェクトの資金は、欧州連合(EU)が第7次研究枠組み計画(FP7)の情報通信技術向け資金から提供する。プロジェクトのメンバーとして、英国の大学Imperial Collegeやスウェーデンの大学Chalmers University of Technology、ベルギーPhotovoltech社、英QuantaSol社、オーストラリアの大学Australian National Universityなどが参加する。プロジェクトは3年間の計画で、すでに230万ユーロ(およそ300万米ドル)の資金を集めた。

 「PRIMA」は、「Plasmon Resonance for IMproving the Absorption of solar cells(太陽電池セルの吸収率向上を実現するプラズモン共鳴)」の略である。ある特定のナノ構造体を持つ金属の表面に、特定の波長の光を当てると、金属がその光と共鳴するという現象が起こる。これは、金属の表面に光が入射すると、電子の集団が振動する、「プラズモン」と呼ばれる現象だ。これを利用する技術「プラズモニクス」は、半導体チップ上でナノサイズのインターコネクト経由で光信号を伝送したり、生体分子を認識して相互に作用するナノ粒子や、太陽電池セルなどで活用できると期待されている。

図

 金属のナノ構造体を太陽電池セルで利用すれば、セルの光活性物質の光吸収率を向上させることが可能だ。光吸収率が高まれば、太陽電池セルの基板を薄くでき、セル全体の薄型化や軽量化、低コスト化を実現できる。金属のナノ構造体は、多結晶Si(シリコン)や、III-V族化合物を使った高性能な半導体、有機太陽電池、色素増感太陽電池など、さまざまな太陽電池セルの吸収率向上を実現する可能性を持っている。

 PRIMAプロジェクトでは、金属のナノ構造体の物理的な挙動を解明するとともに、その構造体を量産品の太陽電池セルに取り入れることを目指す。

 PRIMAは今後、数多くの構造体を対象に試験を実施し、最先端の太陽電池セルと比較する作業を進める。さらに、これらの構造体の性能や、現実的なコストで適用できるかどうかといった項目について、プロジェクトに参加している太陽電池メーカーが評価するという。

 ヨーロッパはこれまでの科学研究で、太陽光発電やプラズモニクスの両分野において先導的な役割を果たしてきた。今回のプロジェクト発足によって、その地位を確固たるものにすることになる。また、参加している企業にとっては、ほかの企業よりも優位な位置に立てるというメリットがある。その結果、欧州における雇用の創出や、持続的な経済成長の実現にもつながる。もちろん、温室効果ガスの排出量削減も期待できる。

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