米Apple社の「iPad」には、並はずれて高度なプロセッサとメモリー・チャネルのほか、多数のタッチスクリーン向けチップを採用するなど優れた設計手法が採用されていることが明らかになった。
米UBM TechInsights社*1)の分解レポートによると、米Apple社の「iPad」には、並はずれて高度なプロセッサとメモリー・チャネルのほか、多数のタッチスクリーン向けチップを採用するなど優れた設計手法が採用されていることが明らかになった(図1)。同社の分解レポートによると、「iPad」にチップを提供した主要な半導体メーカーに、韓国Samsung Electronics社と米Broadcom社が含まれているという。
Apple社のプロセッサ「Apple A4」は、iPadが搭載したチップの中で最重要の部品といえる。今回の分解で一番の驚かされた。「Apple A4」は、64ビット幅のメモリー・バスを採用している。これはiPhoneやiPod Touchのメモリー・バス幅の2倍だ(図2)。UBM TechInsights社の技術情報部門バイス・プレジデントで、今回の分解レポートを執筆したDavid Carey氏は、「64ビット幅のメモリー・バスは、Apple社がiPadを開発するに当たり、『よりリッチなグラフィックスの実現』を追求したことを示すもの」と評価した。
Carey氏は、Samsung社が64Gバイト・モデルのiPadに用いるNAND型フラッシュ・メモリーを提供したと分析した。一方、東芝は、そのほかのモデルにフラッシュ・メモリーを供給しているという。
「iPad」のタッチ・スクリーンでは、iPhoneやiPod Touchが採用したような1チップ構成ではなく、3個のチップを搭載している。既存のApple社のシステムにも採用されたタッチ・スクリーン制御ICである米Broadcom社の「BCM5974」と入出力制御チップ「BCM5973」は、両方とも今回のiPadに用いられている。このほか、米Texas Instruments社のアナログ・チップも採用されていた。
Carey氏は、タッチスクリーン向けのチップが3個に増えたことについて、「ディスプレイのサイズや解像度を考えると驚くには値しない」と論評した。
米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communication Commission)がウェブサイト上で発表した分解画像を見た上で推測すると、iPadにはおそらく、Wi-FiとBluetoothのどちらにも対応したBroadcom社製のチップ「BCM4329」も採用されている。
Carey氏は、iPadのAl(アルミニウム)製のバックパネル裏の階段状のパターンを称賛した(図3)。このパターンを作ったことにより、外枠ケースの耐久性がさらに高まったほか、iPad内部に複数の部品組み立て品(サブアセンブリ)を固定できたからだ。
Carey氏はこの他にも、iPadのデザイン・ウィンを獲得した企業として、米Cirrus Logic社(音声コーデック)や米Linear Technology社(2個の充電用IC)を挙げた。同氏の推定によると、ドイツDialog Semiconductor社の電源管理用チップも採用されたようだ。
さらにCarey氏は、FCCが発表した分解画像に基づき、iPadに搭載された第3世代(3G)携帯電話機用のデータ・ボードが、「既存の第3世代iPhoneが搭載しているものと似ている」と論評を加えた。
確かに、iPadにみられるチップの多くは、iPhoneやiPodの各バージョンにも採用されている。「Apple社は、可能な限りこれまでと同じ部品を採用したようだ」(Carey氏)。
Carey氏が今回分解した機種は、現在ソニーの傘下にある三洋エプソンイメージングデバイスが製造した1024画素×768画素の液晶パネルを搭載していた。なお、韓国LG Electronicsも、iPad向けに液晶パネルを提供している。
Carey氏はiPadの分解を終えた後、「私も1台欲しい」という感想を思わず漏らした。
米国の市場調査会社であるiSuppli社によると、2010年のiPadの予測出荷台数は710万台に達すると見込まれる。一方で米国の市場調査会社であるInternational Data Corporation社は、出荷台数を600万台数と予測した。
*1. 英UBM TechInsights社は、米EE Times誌と同様に英United Business Mediaの傘下にある企業。
【翻訳 青山麻由子、編集 EE Times Japan】
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