米Intel(インテル)社が「Atom」プロセッサを搭載したスマートホンに米Google社のオペレーティング・システム(OS)「Android」を移植したというニュースは重要だが、パソコン、ネットブック市場を支配するWindows OSと、携帯型情報機器を支配するARMプロセッサの今後を占うという意味でも影響が大きい。
Intel社がAtom搭載スマートホンでAndroidを動作させたというニュースは、米Microsoft(マイクロソフト)社にとっては寝耳に水だったはずだ。それとも、今回のIntel社の動きは、Microsoft社がまだ発表していない何らかの動きに対処するためのものだったのだろうか。Atom搭載スマートホンにAndroidを移植したIntel社は、ARMプロセッサとパソコン向けWindows OSに対してどういう動きに出るべきなのだろうか。
Intel社とMicrosoft社の間には、「Microsoft社がIntel社の脅威となっているARMプロセッサに対応するOSを増やさない限りは、Intel社はMicrosoft社の脅威となっているAndroidをに対応しない」という暗黙の了解があったのではないかと見る関係者もいる。
だが、こうした取り決めは違法ではないのか。不正な市場独占に対して法的措置があった例はこれまでにも数多く見てきたが、今回の件がどちらに当たるかは分からない。書類や正式な協定が存在しないのであれば、違法とは言えないのだろう。
いずれにせよ、市場の多様化は進んでいる。米国のパソコン情報誌「PC World」は、Intel社のシニア・バイス・プレジデントでありソフトウエア・アンド・システム・グループのゼネラル・マネージャを務めるRenee James氏が、開発者向け会議「Intel Developer Forum 2010(IDF 2010)」(2010年4月13日〜14日に中国・北京で開催)で「Intel社はすでにAndroidが動作するAtom搭載スマートホンを用意しており、興味を示している顧客もいる」と語ったと伝えている。
「Windows Mobile」や「Windows Embedded」などの組み込み機器向けWindowsはすでにARMプロセッサで動作している。今回のIntel社の動きを受けて、Microsoft社がARMプロセッサ向けにパソコン向けOS「Windows 7」を移植するという興味深い展開も考えられる。
だが、ARMプロセッサのライセンス供与を受けたメーカーやOEM企業は、Microsoft社がARMプロセッサ向けにWindows 7を移植したとしても興味を示すだろうか。時は流れ、今や韓国Samsung Electronics社などの大手情報機器メーカーは、ARMプロセッサを使って、Androidや「Ubuntu」、「Chrome OS」などのLinuxベースのOSが動作するネットブックを作ろうとしている。LinuxベースのOSに流れた企業が、ARMプロセッサで動作するWindows 7ネットブックに興味を示すかどうかは、はなはだ疑問だ。
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