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「BGA封止品として業界最小/最薄」、三洋がLiイオン2次電池保護用FETを発売電源設計

» 2010年04月27日 14時09分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 三洋半導体は、リチウムイオン2次電池の充放電保護回路に向けたMOS FET「EFC4612R」を発売した(図1)。充電保護用と放電保護用の2つのnチャネルMOS FETを集積している。

 特長は、パッケージ底面に金属ボール(端子)を配置したBGA(Ball Grid Array)パッケージを採用した品種として、「最も小さく、かつ最も薄い」(三洋半導体のハイパワーデバイス事業部スモールデバイス開発部の部長である秋庭隆史氏(図2))ことである。実装面積は1.26mm×1.26mmで、同じくBGAパッケージを採用した同社従来品「EFC4601R」に比べて39%削減した。厚みは0.37mmで、同社従来品に比べて33%削減した。

図1 図1 リチウムイオン2次電池の充放電保護回路に使うMOS FET
上図は「EFC4615R」、下図は「EFC4612R」である。EFC4612Rの実装面積は1.26mm×1.26mm、厚みは0.37mmで、BGA封止品としては「業界最小・最薄」(同社)という。
図2 図2 新製品の特長を説明する秋庭隆史氏
三洋半導体のハイパワーデバイス事業部スモールデバイス開発部の部長を務めている。

 パッケージを小型化/薄型化した目的について同氏は、リチウムイオン2次電池の充放電保護基板の小型化/薄型化に貢献することを挙げた(図3)。リチウムイオン2次電池の性能を十分に引き出すには、過充電や過放電を防ぐ充放電保護回路と組み合わせて使う必要がある。充放電保護基板は制御ICや充放電用MOS FET、いくつかの受動部品から成っており、基板の小型化や薄型化を制約しているのは、主にMOS FETだったとする。「0.37mmという厚みは、制御ICよりも薄くなったことを意味する」と秋庭氏は薄さを強調した。

図3 図3 リチウムイオン電池の充放電保護基板の小型化/薄型化に貢献
左図が、リチウムイオン2次電池の充放電保護回路。制御ICにMOS FETを集積する動きもあるが、MOS FETを外付けすることで、さまざまな仕様のリチウムイオン2次電池に対応できるメリットがある。

 まずは、国内市場

 現在のところ、充放電保護回路のMOS FETには、BGAパッケージではなく、パッケージの4つの辺のうち2辺に端子を配置した品種を使うケースが多い。BGAパッケージを採用したMOS FETを使う割合は、全体の10%に満たないとする。それにもかかわらず、BGAパッケージ品を製品化するのには、明らかな利点があるためである。例えば、ベア・チップを載せるリード・フレームを使わないため、その分の抵抗が減らせる点や、リード・フレームの分だけ薄型化できる点などである。

 BGAパッケージを採用した品種を使うには、BGAパッケージに合わせた実装技術や装置が必要となる。現在のところ中国や台湾の実装工場では対応があまり進んでいないようだが、将来的には中国や台湾でもBGAを使うケースが増えていくとした。まずは、国内市場に向ける。

 新たな製造技術を採用

 いくつかの新しい技術を盛り込むことで、パッケージを小型化・薄型化した。

 まずパッケージに小型化については、新たな製造技術を活用することで実現した(図4)。「セル間隔が1.8μmで、デザイン・ルールが0.25μmの第5世代トレンチプロセスを新たに採用した」(同社)。新たな製造技術を採用することで、MOS FETの性能指数を、115mΩ・mm2から71.5mΩ・mm2に改善した。この性能指数が小さくなることは、オン抵抗の値を変えずに小型化できることを意味する。

 一方の薄型化については、シリコン(Si)ウエハーを200μmにまで薄くするとともに、金属ボールの厚みを従来に比べて120μm削減した。シリコン・ウエハーを薄くするとチップの強度が低下して、基板実装時にチップが割れたり、欠けたりする恐れがある。今回は、チップ表面(金属ボールのある面の反対面)に保護膜を張り付けることで、チップの強度を確保した。

図4 図4 同社にとって第5世代の「トレンチプロセス」を採用
セル密度を高めつつ、オン抵抗を低減した。耐圧は、従来世代とそのままに維持しているとする。

 耐圧(Vdss)は24V、ドレイン電流(Id)は6A、ソース・ゲート間電圧(Vgs)が4.5Vのときのオン抵抗(Rss)は最大45mΩ、標準39Ω、最小24Ωである。実装面積を大きくすることで、オン抵抗を下げた品種「EFC4615R」もある。いずれの品種も2010年5月にサンプル出荷を始める。サンプル価格は、EFC4612Rが100円、EFC4615Rが150円。量産は、2010年6月に月産3000万個規模で開始する予定である。

 なお、パッケージの裏面に端子を形成したLGA(Land Grid Array)封止品にはさらに薄い品種があるものの、「BGA封止品の方が実装作業が容易というメリットがある」(同社)と説明した。

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