マイクロソフトは2010年5月7日、組み込み機器向けオペレーティング・システム(OS)の新版「Windows Embedded Standard 7」を発表した。6月1日から提供を開始する予定。
同社が提供する組み込み機器向けOSには、携帯型情報端末などに向けた「Windows Embedded CE」や、カー・ナビゲーション・システム向けの「Windows Embedded NavReady」など多数あるが、今回同社が発表したのはパソコン向けWindowsとの互換性を持つ「Windows XP Embedded」の後継製品である。対応プロセッサはx86。
Windows Embedded Standard 7は、パソコン向けOSである「Windows 7」を基に、不必要なソフトウエア部品を取り外すことを可能にしたもの。不必要な部品を取り外すことで、OSがストレージ上で占める容量を小さくできる。マイクロソフトOEM統括本部OEMエンベデッド本部でシニアマーケティングマネージャを務める松岡正人氏(図1)によると、「マイクロソフトが考える標準的な構成で使うなら1Gバイト以上になるが、最小で500M〜600Mバイトまで小型化できる」という。
不必要な部品を取り外すことは、前バージョンの「Windows XP Embedded」でもできていた。今回のWindows Embedded Standard 7では、1つ1つの部品を大きくして、部品の総点数を少なくしたという。これにより、OSを構築しやすくなったという。Windows XP Embeddedでは1万3000程度の部品から、必要なものを選んでOSを構成していたので、ユーザーから「どれを選んだらいいのか分からない」という声も寄せられていたという。一方、Windows Embedded Standard 7では部品数が200未満になり、Windows XP EmbeddedよりもOSの構成を決める作業がかなり簡単になった。
デジタル・サイネージが次のターゲット
既存バージョンである、Windows XP Embeddedは、国内のPOS(Point of Sales)端末の「ほとんどが導入している」(松岡氏)という。マイクロソフトは、後継に当たるWindows Embedded Standard 7でも引き続きこの市場を押さえていく構えだが、新しい市場の開拓も計画している。
具体的には、Windows Embedded Standard 7でデジタル・サイネージ(電子看板)市場に進出する意向を見せており、すでに米Intel社と米Microsoft社が共同で試作機を開発している(図2)。このデジタル・サイネージは、画面がタッチパネルになっており、ユーザーの操作に応じて広告の表示を変えられる。さらに、画面上部にあるカメラで機器の正面にいる人の身長を判断して、見やすい位置に広告を表示する機能もある。また、カメラで性別を判別することも可能で、性別によって表示する広告を変えることも可能だ。
このデジタルサイネージはWindows 7から受け継いだWindows Embedded Standard 7の新機能を活用している。タッチパネルはWindows 7同様マルチタッチ対応になっており、カメラによる個人認識はWindows 7のセンサー・アンド・ロケーションAPIを活用している。また、見栄えがするユーザーインターフェースは、同社が開発したグラフィカル・ユーザー・インターフェース技術である「Silverlight」や「WPF(Windows Presentation Foundation)」で作ったものである。そして、このデジタル・サイネージは同社が開発した通信技術であるWCF(Windows Communication Foundation)でサーバーと通信して表示内容を変える。
マイクロソフトは、5月12日〜14日に東京ビッグサイトで開催される「第13回組込みシステム開発技術展(ESEC 2010)」に、NECと共同で試作したデジタル・サイネージを展示する予定だとしている。さらに、6月9日〜11日に幕張メッセで開催される「デジタルサイネージジャパン2010」では、Intel社とMicrosoft社が共同開発したデジタル・サイネージを出展する予定だ。
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