米Google社は2010年5月20日、米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催した開発者会議「Google I/O」で、「Google TV」というソフトウエアを発表した。同社は、「Webとテレビを融合することで、セットトップ・ボックスとその上で動作するソフトウエアやサービスの形が変わり、その結果、テレビの形も変わる」と述べた。
ソニーは今秋、Google TVを搭載したテレビやBlu-rayプレーヤを米国で発売する予定だ。また、スイスLogitech International社は、既存のテレビにGoogle TVの機能を提供するセットトップ・ボックスを開発中だという。
Google TVを搭載したテレビやBlu-rayプレーヤ、セットトップ・ボックスはすべて、米Intel社のAtomプロセッサを搭載する。同社は、2年以上前にデジタル・テレビ市場への参入に向けた取り組みを開始し、2008年8月には検索大手米Yahoo社とWebの機能とテレビの機能を融合するソフトウエア「Widget Channel」の開発に向けて提携関係を結んだ。このとき、Intel社は「Intel Media Processor CE 3100」というテレビ向けのプロセッサを提供した。デジタル・テレビにAtomプロセッサが搭載されるのは今回が初めてとなる。
Google社は、2011年の夏頃に、Google TVのソースコードをオペレーティング・システム「Android」の一部として公開する予定だ。
同社はGoogle I/Oで、検索ボックスから、放送予定のテレビ番組を検索したり、放送中のテレビ番組やWebサイトを閲覧するところを見せた。また、携帯電話でWebアプリケーションが使えるようになったように、Google TVでもWebアプリケーションが使えるところを見せた。
Google社のCEOを務めるEric Schmidt氏は米Adobe社やIntel社、家電チェーン最大手の米Best Buy社、ソニーなどのCEOが参加した討論会で議長を務め、「テレビはもはや、放送される番組を見るだけの道具ではない」と語った。
Google TVの開発マネジャーは、「現在、世界中で約40億台のテレビが使用されている。これは全世界の携帯電話機の台数よりもはるかに多い。開発者にとってテレビ市場より大きな市場はないといえるだろう」と語る。「ただし、Google TV普及のためには、テレビ市場のエコシステム全体からの支援が必要だ」と同氏は言う。
Google TVは無線LANやイーサネット接続で使用し、Google TVを搭載したセットトップ・ボックスは、ケーブル・テレビや衛星放送のチューナとHDMI端子で接続する。Google TVの操作画面を表示するには、GPU(Graphics Processing Unit)が必要で、高精細オーディオやサラウンド・サウンドの再生にはDSP(Digital Signal Processor)が必要だ。リモコンは、キーボードやWebページを操作するポインティング・デバイスを備えている。
Google TVは、Android搭載スマートフォンでも操作できる。Androidの音声認識機能を使って操作することも可能で、スマートフォンに番組名を話し掛けるだけで検索や閲覧ができる。
Google TVに関するうわさは2010年3月に流れ始めた。その当時、Yahoo!社の広報担当者は「2010年末には、Yahoo!社のWidget Channelを搭載したテレビが何百万台も市場に出回るだろう」と語っていた。
これまでにもコンピュータやWebに関わる大企業がWebとテレビ放送の融合に挑戦してきたが、わずかな成果しか得られていない。米Microsoft社はこれまで何年にもわたって、Windows OSでテレビ放送や録画済みの動画を見ることを可能にする「Media Center」機能を提供してきた。米Apple社は「Apple TV」というテレビ番組をハードディスク装置に蓄積する機器を1年以上販売している。しかし、どちらも消費者からの支持は得られていない。
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