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次世代の無線LANとなることを目指すWiGig、Wi-Fi Allianceに接近無線通信技術 ミリ波(2/3 ページ)

» 2010年07月14日 00時00分 公開
[Rick Merritt,EE Times]

 同社のRFトランシーバIC「SB8110」は、2010年6月に発売した。このトランシーバには、WirelessHD、WiGig、または両方の方式に対応できる機器を設計するための参照設計とツールが付属している。WirelessHDは直交周波数分割多重方式(OFDM)を利用し、WiGigはシングルキャリア伝送方式を利用する。

 「このチップですべてが可能になる」とLeMoncheck氏は述べ、「WiGigにもWirelessHDにも対応するICを最初に発売したのはわれわれだと確信している」と付け加えた。ただ1つ、SiBEAM社は、今のところ、既存の各種無線LAN方式には対応していない。多くのWiGig支持者は、2.4GHz帯や5GHz帯、60GHz帯のWi-Fiに対応するトリプルバンドの無線LAN機器で市場に参入したいと考えるだろう。

 ともかく、SiBEAM社が自社の技術に競合する技術を採用したことは抜け目のないことで、比較的小規模なチップ・ベンダーにとっては必要な手段であったといえるだろう。WiGigグループはすでに、60GHz帯を使った通信に対応するICを開発する新たな企業を4社取り込んでいる。またWiGigのメンバー2社は、WirelessHDと直接競合する映像ストリーミング送信向けのチップを製造するためにWiGigの技術を使用していると言われている。

 SiBEAM社は、チップの詳細な仕様を提供していない。LeMoncheck氏は、WirelessHDとWiGigのどちらも、理論上の最大スループットである約4.5Gビット/秒を達成すると述べている。WiGigを使用すると、チップは、およそ1Wの消費電力でアプリケーション層のスループットを数Gビット/秒にできるとLeMoncheck氏は語る。

図 図2 パナソニックのテレビ受像機「TH-P50Z1」 手前のラックの2段目にあるチューナから最上段にある送受信機を経由して、WirelessHDで動画を送信している。

 SiBEAM社は、WiGigとWirelessHDの両方に対応するチップの価格や寸法などの詳細は公表していない。「無線側は、大幅な改良やさまざまな微調整は必要なかった。ベースバンド側では、シングルキャリア伝送方式とOFDMは大幅に異なる。しかし、チップ上では両方式に関わる部分で、共通化しているブロックもある」とLeMoncheck氏は述べている。

 同氏が自社のロードマップについてコメントすることはなく、SiBEAM社が将来WirelessHD専用またはWiGig専用のチップを計画しているかどうかは不明のままだ。「それについてはユーザーがこのICをどのように使うのかによる」とLeMoncheck氏は続けた。SiBEAM社は、テレビ受像機とセットトップボックスの間で非圧縮の高品位映像を伝送するWirelessHDチップを2008年から出荷している。韓国LG Electronics社、米Vizio社、ソニー、東芝、パナソニックがこのチップを採用し、送受信機とテレビ受像機を発売した(図2)。SiBEAM社は昨秋には第2世代のチップの出荷を開始した。

相互接続テスト前に製品を投入

 最近、Wi-Fi Allianceは、新しい作業部会を作り、60GHz帯を使う無線LAN用の認証プログラムの開発を委託した。この作業の一環として、Wi-Fi AllianceはWiGigの仕様を評価し、802.11adグループの作業を調査する予定である。新しい作業部会のメンバーは、現在のところWirelessHD技術を考慮に入れないと決めている。

 「WiGigグループによるこの発表は、技術の選別を意味しているわけではない」とWi-Fi Allianceの最高責任者であるEdgar Figueroa氏(図3)は述べ、「これで60GHz帯の技術調査が始まるが、60GHz帯を使うほかの技術を検討する余地は残っている」と付け加えた。

図 図3 Wi-Fi Allianceの最高責任者を務めるEdgar Figueroa氏 WiGigとの協定は結んだが、60GHz帯を使うほかの技術を排除するつもりはないとした。

 協定によって「Wi-Fi Allianceは、次世代の規格を形成する技術を利用でき、またWiGigはWi-Fi Allianceの承認を得ることができる。この承認を得られるという点は、WiGigグループにとって大きなことだろう。Wi-Fi Allianceの技術は、最も成功しているネットワーク技術の1つだからだ」とIn-Stat社のO'Rourke氏は語っている。

 Wi-Fi AllianceもWiGigグループも迅速な行動を目標としているが、WiGigグループの戦略は明らかに、最初に製品を市場に投入し、次に外部の認証プログラムを手配することである。たとえばWiGigは、独自のプラグフェスタ(相互接続性テスト)を実施してから、テストのためにWi-Fi Allianceなどの外部グループに自社の製品を提供するつもりだ。「開発者の中には、外部の認証がないまま製品を出荷するものもいる」と語るのは、WiGigグループの議長でありIntel社の60GHz帯規格のディレクタであるAli Sadri氏である。「われわれは、外部機関に100%依存しているわけではない」とAli Sadri氏は述べている。

 この手法は、無線LANの最新バージョンである802.11nの手法を反映したものだ。

 IEEE規格がまだ初期段階のとき、いくつかのベンダーが11n対応製品を出荷した。11nグループの間で議論が続く中、Wi-Fi AllianceはIEEE規格の第2草案を認証した。IEEEプロセスが完了した後、Wi-Fi Allianceは認証プログラムの細部を更新した。

 「市場には11n対応製品に対する強い要望があった」とFigueroa氏は語る。「11n対応製品の市場は、数十億ドル規模の産業となった」とFigueroa氏は続けた。同様に今回もWi-Fi Allianceは「IEEEの計画に縛られることはないだろう」とFigueroa氏は述べ、「Wi-Fi Allianceは明確に独立しており、無線LANは802.11規格のスーパーセットであると考えている」と付け加えている。

 それでもなお、Wi-Fi Allianceが60GHz帯の認証プログラムを定着させるまでに2年以上かかる可能性があるとFigueroa氏は述べている。「必須の機能や任意の機能、一連のプラグフェスタのイベントについて多くの議論がある」と同氏は語る。「議論には相当の時間がかかり、多くの変動要素がある。これは、MAC層や物理層が新しいハードウエアであり、いくつかのプロトコルは非常に異なったものになるからだ」とFigueroa氏は付け加えた。

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