アモルファスSi(シリコン)や多結晶Si、単結晶Siはそれぞれ、結晶の並び方が異なる。この結晶の並び方が一定であるほど、半導体としての性能が高まる。高性能な半導体チップには、Siをエピタキシャル成長させて、結晶格子を完全に規則正しくしたものを使う。しかしこれまで、有機半導体では結晶を完全に規則正しく配列させることができなかった。
米国の研究所であるOak Ridge National Laboratoryの研究グループは今回、ポリチオフェン(PEDOT)というポリマーをエピタキシャル成長させることに成功したと発表した。これにより、Si半導体のように高速に動作する、低コストなプラスチック製の半導体チップを実現できる可能性が広がるという。
導電性ポリマーはすでに、LEDやディスプレイ、太陽電池などで広く使われているが、結晶の状態で用いられてはいない。Oak Ridgeの研究グループによれば、ポリチオフェンをエピタキシャル成長させることにより、有機半導体の性能やエネルギ効率を高められるだけでなく、コストの低減も可能になるという。
同研究グループは、Cu(銅)結晶の表面にパターンを形成することにより、ポリチオフェンをエピタキシャル成長させた。銅のテンプレートを用いることで、ポリチオフェンを構成する原子がテンプレート上で完全に規則正しく整列する。そして、最初に形成されたシード層をベースとして、完全に規則正しい層が次々と形成される。研究グループによると、この技術は今後、さまざまな有機半導体に適用できる可能性を秘めているという。
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