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【NIWeek 2010】NI社がLabVIEW 2010を発表、コンパイラ改善で実行時間を平均20%短縮テスト/計測

» 2010年08月04日 15時58分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 米National Instruments(NI)社は、計測/制御用アプリケーション・ソフトウエアに向けたグラフィカル開発ツール「LabVIEW 2010」を、米テキサス州オースチンで2010年8月3日〜5日(現地時間)に開催中のカンファレンス兼展示会「NIWeek 2010」で発表した(図1)。

 LabVIEWには、データ集録や信号処理、計測器制御、シミュレーション用のさまざまな関数や機能があらかじめ視覚的なコンポーネントとして用意してある。利用者は、LabVIEWの画面上で、コンポーネントを複数配置し、このコンポーネント同士を接続することで、計測/制御用ソフトウエアを開発する。

図1 図1 NIWeek 2010でLabVIEWの新版「LabVIEW 2010」を発表
毎年8月に米国テキサス州オースチンで開催しているカンファレンス兼展示会「NIWeek」では、数多くの新製品が発表される。NIWeek 2010では、LabVIEW 2010の性能向上をアピールするデモを見せていた。

 同社は、LabVIEWの性能向上や、機能拡充の取り組みを毎年継続して続けており、昨年の同カンファレンスでは、「LabVIEW 2009」を発表していた。LabVIEW 2009に比べた、LabVIEW 2010の最大の特長は、コンポーネント同士を接続した状態のプログラム記述(「ブロックダイアグラム」と呼ぶ)から機械語に変換するコンパイラを改善したことである。「顧客が実際に使用している計測/制御用ソフトウエアを使って比較したところ、LabVIEW 2010では従来に比べて、コンパイル後の計測/制御用ソフトウエアの実行時間が平均20%短縮した」(同社)(図2)。

図2 図2 LabVIEW 2009でコンパイルしたプログラムとLabVIEW 2010でコンパイルしたプログラムの処理性能の違い
処理内容によって、実行速度の短縮幅は異なる。実際の顧客のプログラムを使って比較したところ、平均すると処理性能が20%向上した。

 同社は、2年前のカンファレンス「NIWeek 2008」で、コンパイラの改善に継続的に取り組むことを表明していた。まず、LabVIEW 2009では、利用者が記述したブロックダイアグラムを「コンパイラ中間表現」に変換するため「DFIR(DataFlow Intermediate Representation)」と呼ぶ処理を追加した。ブロックダイアグラム中の冗長な部分を取り除くなどして、計測/制御用ソフトウエアの実行速度を向上させるためである。

 LabVIEW 2010では、コンパイラ中間表現から機械語に変換する際の最適化処理を担うために、「LLVM(Low-Level Virtual Machine)」を導入した(図3)。LLVMは、米国イリノイ州のUniversity of Illinois at Urbana Champaignが開発したオープンソースの開発ツールで、教育機関や産業界で広く使われているという。これまでは、同社が開発した独自のコンパイラを採用していた。

図3 図3 「LLVM(Low-Level Virtual Machine)」を導入
コンパイラ中間表現から機械語に変換する処理を実行するために、米国イリノイ州のUniversity of Illinois at Urbana Champaignが開発したオープンソースの開発ツールLLVMを新たに採用した。

 このほかLabVIEW 2010には、計測/制御用ソフトウエアを実装するターゲットハードウエアにFPGAを使うときのプログラム記述を支援する機能「IP Integration Node」や、ウエブブラウザを使って、LabVIEWがインストールされた計測/制御用コンピュータの状態を監視・変更する機能などを新たに搭載した。

 IP Integration Nodeとは、米Xilinx社が提供しているIPコアデザインツール「CORE Generator」を使って作成したIPコアを、LabVIEWのブロックダイアグラムに容易に取り込めるようにしたもの。これまでは、FPGAのIPコアは、ハードウエア記述言語「VHDL」として、LabVIEWに取り込む必要があった。IP Integration Nodeを使えば、VHDLコードにすることなく、IPコアをLabVIEWに取り込める。「FPGAに関連した既存の設計資産を、よりいっそうLabVIEWで活用できるようになった」(同社)。

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