機器の消費電力低減に役立つSiCパワー半導体(ダイオード)を採用したエアコンを三菱電機が製品化した。世界初だと主張する。
三菱電機は2010年8月24日、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体を用いたインバータを内蔵するエアコンを2010年10月に発売すると発表した(図1)。「世界で初めてエアコンにSiCを採用した」(三菱電機)という。
2010年10月から発売するエアコンは同社の一般消費者向けのルームエアコン「霧ヶ峰ムーブアイ」のZWシリーズ10機種。10機種を合わせた月産生産台数は2万台である。そのうちの2機種「MSZ-ZW281S」と「MSZ-ZW361S」にSiCパワー半導体を用いた。冷房時の定格出力はそれぞれ2.8kWと3.6kWであり、10畳と12畳の部屋に向くという。
家電製品は一般消費者を対象とするため、性能向上よりも、材料コストの低減が大前提となる。SiCパワー半導体はSiパワー半導体に比べて性能は優れるが、価格が高価であることから、SiCパワー半導体が最初に導入されるのは、産業機器などだと考えられていた。しかし、今回、三菱電機は家電製品でSiCパワー半導体の製品化を先行した。
今回のエアコン製品化は、同社が1カ月前に公開したスケジュールを大幅に早めたものである。
2010年7月時点では、SiCパワー半導体の量産を2011年度に開始するとしていた(図2)。製品化の流れは、最初にSiCショットキバリアダイオード(SBD)を実用化し、IGBTと組み合わせたハイブリッドモジュールを製品化するというものだった(図3)。SiCパワー半導体の主な用途は、産業機器、家電、太陽光発電システムであるとしていた。
SiCパワー半導体を、エアコンの圧縮機(室外機)を駆動するインバーターICとして用いた。これにより、冷房定格能力が3.6kWである機種を駆動すると、Siパワー半導体を搭載した同社の2010年度モデルと比べて、インバーターのスイッチング損失が約60%低減するという(図4)。
システム全体としても、期間消費電力量1)が1183kWhから1110kWhへと、約6%減少する。
三菱電機によれば、冷房定格能力が3.6kWであるエアコン製品としては、最も期間消費電力量が少なくなるという。
*1)期間消費電力量は日本冷凍空調工業会規格に基づいた消費電力量の算定値。算定期間は6月2日から9月21日(冷房時の室温を27℃に設定)までと、10月28日から4月14日(暖房時の室温が20℃に設定)までである。以上の動作モードで6時から24時まで18時間運転した場合の消費電力量である。外気温度は東京を想定する。
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